日本人客も多い自転車ショップ『バイク・マート』
タイは2010年前後から急速に自転車乗りが増加している。ロードレーサータイプやマウンテンバイクなどを駆り、バンコク市街地や郊外で走っているのをよく見かけるようになった。実は、毎年、タイでは国際的な自転車ロードレースが開催されており、日本人選手のチームが2連覇しているなんてこともある。
タイ統計局のサイトにあるタイ通信技術情報省2002年発表の6~24歳のスポーツ人口では自転車は20.4万人となっている。10年前の統計ではあるが、この年代がそのままスライドして、ロードレーサーなどで自転車を趣味にする人口は概ねこのレベルなのかと思う。
これはバンコクにある日本人に人気のデパート『エンポリアム』裏手にある自転車ショップ「バイク・マート」のオーナーのタイの自転車人口の証言とも一致する。
店内にある自転車はほとんど輸入物
「健康維持の運動として趣味で乗っている人が大半で、レース大会などスポーツとして本格的に取り組むのはそのうちせいぜい1~2万人レベルかと思います」(「バイク・マート」のオーナー)
タイでは自転車は金のかかる趣味のひとつになる。タイでも自転車は製造されているが、スポーツ用のものは安物でしかなく、趣味やスポーツとして楽しむ人の要求にスペックが追いつかない。そのため、自転車というとほとんどが輸入物になる。
しかも、タイでの輸入自転車は日本のものとほとんど値段が変わらない。例えば、イタリアのビアンキというブランドのロードレーサーが日本では69000円のものが、タイでは19000バーツ(約70500円)レベルである。とはいえ、一食が屋台であれば200円程度で済んでしまう物価水準ではかなり高額である。
「特に中国製などがよく売れます。スペックが高く、安いからです。台湾のジャイアント社のものも人気です」(同)
そんな中、世界的なエコブームに乗ってか、バンコク都庁はバンコク都内に会員制の貸し自転車スタンドを50箇所、2012年から設置している。年会費は100バーツで、時間あたり20バーツで借りることができる。
とはいえ、バンコク都庁のこのサービスで配備されている自転車は合計330台にしか満たない。また、日中の気温の高さ、雨季の雨の激しさもあってか、利用者はあまりいないようだ。
しかし、車の運転マナーが非常に悪いタイでは、車と自転車の接触事故も多いのだ。今月3日は北部チェンマイで23歳の女性が運転する車がサイクリストの車列に突っ込んでしまい、死亡者3人、重傷者2人を出している。また、2013年2月に英国人男女が、2015年2月にはチリ人の男性が、自転車での世界一周旅行中にタイで車にはねられて亡くなっている。
タイでは年間およそ2~2.3万人が自転車での交通事故で命を落とす。タイは路面が悪い上に、車の運転手は周囲に注意を払わない傾向にある。
それでも、今後も経済発展で健康ブームなどに目が行くようになったり、エコブームにのって行政がレンタルサイクルなどをプッシュすると、自転車を趣味にする人は増えるだろう。
しかし、ドライバーの意識改革や自転車通行帯の設置などが行われない限りは、しばらくは自転車の交通事故も増加するのではなかろうか……。
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アレックスモールトンも人気で、顧客のために組み立て中だった
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都心から約15キロの地点でこのようなまっすぐで広い道路がたくさんある
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バンコク都が都内で実施する会員制貸し自転車のスタンド
<取材・文・撮影/高田胤臣>