産廃処理法違反は不起訴に。低価格住宅のアイダ設計社長、社内改革を語る
坪単価24万円~という低価格住宅の販売で知られるアイダ設計。
同社は、昨年10月に住宅解体工事に伴う産業廃棄物の処分を無許可業者に委託したということで、執行役員ら男性社員3人が廃棄物処理法違反(委託基準違反)の疑いで書類送検された。しかし、その後3月に不起訴処分が決定していたことを知る人は少ない。
一部では「安い住宅が売りだから、無許可業者に依頼することなどで経費節減している」というような報道も見られた中、果たして本当はどうだったのか。
アイダ設計代表取締役社長、會田貞光氏を直撃した。
「不法投棄の件は、当社が悪かった点はもちろんあります。警察でもお話しましたが、2010年の12月から、問題となった産廃処理業者と取り引きを始めたんですが、取り引き開始時は彼らも免許を持っており、マニフェストも確認していました。その後、料金の関係などもあり、その業者への発注はなかったんですが、その間に免許が失効していたらしいんです。それで、再びその業者に依頼した時、新しい担当者が再確認するのを怠ってしまった。その後、2年間も確認しないまま発注を続けていましたから、もううちのミスとしても酷いものです。その業者がさらに孫請けに再委託していましたが、この点も元請けである当社に責任があるのにちゃんと監督できていませんでした」
なぜ確認が徹底されなかったのか?
「当社の建設部門ではきちんと電子マニフェストを取って作業していました。しかし社内の部門ごとにそうした業務についての共通のフォーマットのようなものがなく、ある部署は認識が甘いままだった部分があったのです。これは当社が設計事務所から創業し、無駄なコストをおさえるために自社内で様々な部門を抱えるようにしてきた過程にも要因があるんです」
それはどういうことか?
「もともと私は設計士だし副社長は測量士だし、役所の交渉も自分たちでやってきました。不動産業者などに騙されて悔しい思いをしたこともあり、それならと、土地の仕入れや販売も全部手探りながら自分たちでやってきました。
これは、住宅を低価格で提供するために無駄なコストをカットできるという強みでもあります。当社は土地・資材の仕入れ、部材のカットから住宅販売まですべて自社一貫体制。これで中間マージンを抑えているわけです。
例えば、車輌部などというのもあります。ここは営業車が増える中で、修理を外注することも増えたので、それなら自社に修理できる部門を作ってしまおうと思い、実際にできたわけです。ここはいま、社内の車でなく、一般ユーザーの車両整備なども請け負うようになっています。
また、印刷部も、外注すると原稿の締め切りや料金の制約もあるので、チラシを刷るために1日100万枚以上の印刷が可能な輪転機を購入しました。最初はスタッフも素人だったが、社外へ研修に行かせるなどし、今では全員プロになりました。現在は他社のチラシの印刷を発注されるまでになっているほどです。
これは資材部も同じで、付き合いのあった材木屋さんの資金繰りが悪化して当社が発注していた資材も差し押さえされそうになったため、まるごとうちで資材部として引き受けるようになったのが始まりです。今では、年間約2600棟分の資材を自社でプレカットしています。
一事が万事、こんな感じですから、同じ会社の中にジャンルの違う業種があるようなもの。待遇や役職も統一させるのも苦労するくらいなんです」
その意味で、社内の横の連携ができていなかったということか?
「そういうことになります。今回の一件で、不起訴にはなりましたが、社内の問題点も明らかになりました。全取引先及びその取引内容を見直し、各取引形態のコンプライアンス状況の検証を行っており、再発防止に努めるようにしました。法律の改正に対しても、迅速な対応を可能とするため、関係法令の改正をタイムリーに把握できる仕組みを導入しており、それに加えて、社内研修などを行って社内で共通の認識を持つように努めるべく社内改革を行っていくつもりです」
「金銭的な理由でマイホームを諦めてきた人にも、一戸建ての夢を実現して欲しい」――會田氏は低価格住宅を手掛ける理由をこう語る。というのも、自身の父が大工で幼いころから家造りを身近に見てきたため、一戸建て住宅にかける思いは誰よりも強いのだという。
不況下の住宅業界において、建設棟数や売り上げも増えつつあるというアイダ設計。社長自ら指揮を執る社内改革によって同社がどのように変わっていくのか注視していきたいところだ。 <取材・文・撮影/HBO取材班>
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