県民所得減、光熱費急増…窮地の長野県が採用したエネルギー戦略とは?

 燃料費の高騰による光熱費の上昇は、庶民の懐にダメージを与える。シェールガスの増産によって現在、一時的に石油価格などが下がっているが、長期的には今後も燃料費は上がると予測されている。  そんな中、地域のエネルギー消費のあり方を見直そうとしている自治体がある。長野県では2013年に「環境エネルギー戦略」を策定、エネルギー政策を通して地域経済を活性化させようとしてきた。今では温暖化対策に取り組む自治体は珍しくないが、経済とエネルギーを結びつけ、先進的な政策を打ち出している所は少ない。長野県はなぜそこまで熱心なのだろうか?

県民所得12%減なのに光熱費は47%増

長野県民の一人当たりの光熱費と県民所得の推移(図/長野県環境エネルギー課)

 長野県がこの戦略を策定した背景には、年々上がり続ける光熱費が県民生活を圧迫しているという危機感があった。一人当たりの県民所得は2000~2008年度にかけて12%下がっている一方、光熱費は47%も増加している。このまま家計に占める割合が増加していけば、将来は寒くても暖房費を払えない家庭が出てくる可能性もあった。  県全体として考えても、主要産業の精算額とほぼ同程度の化石燃料代を海外に支払っていることが判明した。そこで、現在エネルギーを買うために地域の外に出て行っているお金を、地域内で循環させようと考えるようになったという。  県は市町村や地域の金融機関と、地域でお金を回すための研究会を定期的に開催。情報提供を通して、各自治体が新しい政策を実施しやすくなった。また、2013年には県が所有する公共施設の屋根を地元の民間企業に貸して、太陽光発電を設置するメガソーラー事業を実現した。

経済効果は外部業者のメガソーラーの約3倍

諏訪湖のほとりにある浄水場で実施した「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」

 一般的に太陽光発電などの事業は多くの雇用を生まず、地域経済への貢献は限定的とされている。しかし、この事業では積極的に地元企業を活用したため、外部の業者が手がけるメガソーラーと比べて、地域への経済効果はおよそ3倍にもなった。また、このプロジェクトに関わるノウハウを県内に公開して、他の地域にも広めようと努めている。  発電に加え、省エネにも熱心だ。その一環として、新しい建物を建てる際に自然エネルギーの導入や高い省エネ性能を検討することを義務づけ、地元の施工業者への情報提供を行っている。省エネ建築や省エネリフォームが広がることで、地域でかかる光熱費が減り、その分地元事業者の収入が増えることになる。

「おひさまBUN・SUNメガソーラープロジェクト」を実施した岡谷酸素株式会社は、原則として資料やデータをすべて公開することになっている

 このようなエネルギー政策を通して地域経済の活性化を進める県の取り組みは、エネルギー先進地のドイツを参考にしたものだ。政策を担ってきた県の環境エネルギー課職員は、「長野県の冬の気候はドイツと似ていると言われますが、これからはエネルギーの分野でも、長野は日本のドイツのようだと言われるようにしていきたいと思います」と意気込んでいる。 <取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
ご当地電力はじめました!

地域の電力は自分たちでつくる!各地でさまざまな工夫をこらして、市民主導の「ご当地電力」が力強く動き出しています。

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