失恋のショックからさっさと立ち直る秘策

【石原壮一郎の名言に訊け】~宇野千代の巻 Q:3年間付き合った彼女と別れた。理想の彼女だった。原因はひと言では言えないが、いろんなすれ違いがあり、たくさんの不運があり、それなりの必然があった気もする。仕方ないと自分に言い聞かせているが、こんなにショックなことだとは思わなかった。ストーカーまがいのことをしてしまいそうな誘惑を必死でこらえている。どうすれば忘れられるのか。(栃木県・25歳・自営業) A:おやおや、なんだかポエミーな相談が来ましたね。商店街でブティックを経営して30ン年、この界隈では「失恋といえば、この人」と定評があるハルミさんに聞いてみましょう。こんにちは、ハルミさん、お忙しいところすいません。  お忙しいだなんて、意地悪ね。見てのとおり、ヒマでヒマで。こんなシャッター街のブティックに洋服を買いに来る人なんていないわよね。お店を開いたころは、この商店街も私の私生活も、そりゃもうにぎやかだったものよ。あら、ごめんなさい。なになに、失恋してウジウジしている情けない男の相談を持ってきたのね。  まー、なんて楽しそうなのかしら。おうちに帰るまでが遠足なのと同じように、失恋のショックを受けてだんだん癒えていくまでが恋愛ですものね。おいくつ? 25歳。まだまだこれから、たくさん失恋できそうね。うらやましいったらありゃしない。  宇野千代さんってご存知。大正、昭和、平成と、小説家としても着物デザイナーとしても活躍した才女で、尾崎士郎やら東郷青児やら、いろんな人と浮名を流した「恋多き女」の代表格よ。そんな情熱的な恋愛の達人が、こう言っているわ。 「失恋って、当の本人は苦しい苦しいと言っているけれど、本当は終わった恋をいつまでも思い出して楽しんでいるようなところがあると思う。本当に苦しいなら、一秒でも早く忘れる努力をするはずだから」  今のあなたは「そんなに簡単に忘れられたら、苦労しない」って言いたいかもしれないけど、あとで振り返ったら「ああ、結局自分は失恋を楽しんでたんだな」と思うはずよ。「なんでそんなことがわかるんだ」って? わかるわよ。私も何度も同じ経験をしてきたもの。そういう日が来ることを楽しみに、今しか味わえない感情を存分にご堪能あれ。  もしかしたら、仕事の失敗や人間関係のトラブルも似たところがあるんじゃないかしら。失恋にせよ何にせよ苦しい経験はしっかり受け止めてきちんと向き合えば、あなたをイイ男に磨いてくれるけど、単にずるずる引きずったり相手のせいにしようとしたりすると、磨くどころかくすませてしまうだけ。だから、絶対にストーカーになんてなっちゃダメよ。  宇野千代さんは「忘れること、それが最上の治療法であり、 恋人との愛をつなぐエチケットです」とも言ってるわ。3年間付き合ってきた「理想の彼女」との思い出を大事にしたかったら、心の中の彼女といつまでも対等に、堂々と胸を張ってつながっていたかったら、ここはふんばって気持ちよく失恋してみてちょうだい。

【今回の大人メソッド】失恋はじつは「楽しいこと」だと思い込んでしまおう

もちろん、苦しいのはわかります。しかし、言ってみればその苦しみは「好きで抱いているだけ」。恨みや怒りも、自分が捨てさえすればその瞬間に消滅します。無駄に被害者意識をふくらませたところで、ロクなことにはなりません。失恋して苦しいときは、「じつは自分は、この状況を楽しんでいるのかも」と考えてみましょう。少しは楽になれるはずです。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
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