メールですむのに「とりあえず会いましょう」…他人の時間を奪う“時間泥棒”の対処法

時計 何の気なしに他人の時間を奪う人がいる。  メールですむ用事でも「とりあえず会いましょう」と呼び出す。平然と遅刻し、悪びれない。「少しだけいいですか」と言いながらの長電話。「あと1つだけ」と食い下がり、話を引き伸ばす。  つきあわされるほうはたまったものではないが、仕事上むげに断れないこともある。こうした“時間泥棒”とどう対峙すべきか。  戦国大名・長曾我部元親(ちょうそかべもとちか)の生涯を描いた『夏草の賦(なつくさのふ)』(司馬遼太郎/文春文庫)。主人公の元親は策謀家として知られる。ずば抜けた統率力で四国全土を制し、天下をも窺う。その勝負哲学から時間泥棒に立ち向かうヒントを探りたい。

煮え切らない態度を貫く

 元親の弟が阿波国(現在の徳島県)の宿敵に殺される事件が起きる。元親はすぐに行動を起こさない。国内を一致団結させるためには<まっさきに怒ってはいけない。どちらかといえば、煮えきらぬ態度でいるほうがいちばんいい>と考えたのだ。  この作戦はビジネスの現場でも大いに役立つ。時間を奪う輩には、のらりくらりと対応する。そもそも「安心させてほしい」「代わりに解決してほしい」という欲求を安易に満たすからこそ、ターゲットにされるのだ。あえてピントを外した対応で、諦めを誘おう。

褒め殺しで溜飲を下げる

 元親は大将の役割をこう定義する。「大将というものは、ほうびを与える者をいうのだ」。働きに応じて与えられる恩賞は名誉であり、<男はこの名誉のためにいのちをすら捨てる>という。  では、時間泥棒にもほうびを用意するのはどうか。心配性なら慎重さを、軽はずみなら行動力を褒めつくす。承認欲求を満たせば、しつこさがやわらぐ可能性もある。こちらの思惑通りにはしゃぐ姿を見るだけでも、溜飲が下がるというものだ。

仕事を俯瞰し、問題を洗い出す

 元親は徹底した実務家でもあった。後継者である息子・弥三郎にこうアドバイスする。<将たるものはかならず実務的な着想を持たねばならぬ。雨をみれば鉄砲の火縄をしめらさぬよう陣ごとに用心させよ>  時間を奪われるのはわずらわしく、腹が立つ。だが、目を向けるべきは業務に支障をきたすという点だ。仕事全体を俯瞰し、問題を洗い出せば、時間泥棒を追い払う口実も見つけやすくなる。  あまりに傍若無人な相手には、そっくりそのままの行動で時間を奪い返すのも一興だ。奪われる側になってはじめて芽生える自覚もある。あわせて自分自身の振る舞いも総点検しておこう。人こそ人の鏡、なのである。 <文/島影真奈美> ― 【仕事に効く時代小説】『夏草の賦』(司馬遼太郎) ― <プロフィール> しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。
夏草の賦 [新装版] 上

四国土佐の片田舎に野望に燃えた若者長曽我部元親。わずか一郡の領主でしかなかった彼が四国を征服し、あわよくば京へ…。が、そこでは織田信長が隆盛の時を迎えんとしていた。

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