厄介な取引先にうまく対処するには?

 取引先に無理難題を押しつけられ、辟易することがある。
すべて辛抱

すべて辛抱

 例えば、不利な条件ばかりを押しつける契約書。不用意に受け入れると法外なペナルティが課される恐れがある。かといって強硬につっぱねるのも角がたつ。こうした厄介なクライアントにうまく対処するにはどうすればいいのか。  田舎から江戸に出てきた少年ふたりが才覚を発揮し、商売を成功させていく時代小説『すべて辛抱』(半村良/集英社文庫)。さまざまな角度から商売における「辛抱」を描く。その中から厄介な取引先への対処法として役立ちそうなものをピックアップしてみた。

嫌う素振りは見せず、遠ざかる

 主人公の亥吉は子どもの頃、荒れ寺に棲みついた僧侶に処世訓を教わる。「嫌う相手に嫌う心を示すな」もその一つだ。僧侶はこう諭す。 「嫌うことと厭うこととは同じではない。厭う相手からは身を引き遠ざかればよい。嫌うことは即争いじゃ。戦う相手と心得よ。その上で争いをできるだけ避ける算用をせよ。争えば勝ってもそれなりに損が行く」  嫌われたことを知った相手は多くの場合、腹を立てる。「嫌われるのも当然」というのは嫌う側の論理なのだ。そもそも、相手は無理難題を押しつけていることに無自覚だったりもする。その結果、逆恨みされたり、執着されたりと、より一層厄介な関係に発展する可能性があるのだ。

“抜けた面”で油断させる

 足元を見られないためには、賢く見せたほうが良さそうである。だが、水商売の達人として登場する三蔵のアドバイスは逆だ。 「なるべく賢そうに振舞うなよ。少し抜けた面(つら)をしてたほうがいい」と、きつく戒める。  よく「出る杭は打たれる」とも、「出過ぎた杭は打たれない」とも言われるが、何も他人が打ちのめしたくなるような振る舞いをする必要はないというわけだ。無駄な争いにエネルギーを費やさないのも大人のサバイバル能力である。

「儲け」に意識を向ける

 主人公・亥吉には幼なじみの千造が気がかりで仕事が手につかない時期もあった。妻・りくは「前を向いて歩いてよ。昔のことばかり気にしてると転んじゃうからね」と釘を刺す。  さらに「放っておきなよ。昔のことなんぞ、たんまり儲けたあとでいいんだから」と言われ、亥吉は我に返る。  現代に例えると、取引先のムチャぶりに気をとられ、業務が滞っている状況だろうか。腹立たしい言動を反芻しても、仕事の効率が下がるばかり。利益に意識を向け、商売に邁進すれば、雑音に惑わされづらくなる。  長年仕事をしていれば、無理難題への対処法は蓄積されている。むしろ、厄介なのはないがしろにされた怒りや恨み。腹立たしさを手放せば、おのずと突破口が見えてくる。 <文/島影真奈美> ― 【仕事に効く時代小説】『すべて辛抱』(半村良) ―
すべて辛抱

「江戸ドリーム」を描く、著者最後の長篇小説

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