紙幣に政府批判の文言を勝手に印字…中国で“邪教”指定された「法輪功」が続ける草の根活動
日常的に使う人民元紙幣に何やら文字が印字されている。これは中国で1999年から「邪教」として禁止されている「法輪功」の活動の一環として印字されているものだ。
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そして今もなお法輪功は、中国国外で『大紀元』などの複数のメディアを持ち、中国の外から中国批判情報などを発信しているのだが、実は中国国内でも、禁止、弾圧されて壊滅したと思われていた法輪功は密かに活動を続けている。それが、冒頭の紙幣の他にも政府批判を延々と訴える自動再生テープを無作為に電話して流したり、バス停でバス待ちをしていると「健康に興味がありますか?」と話しかけてきて、話を聞くと、気功の話となり、さらに興味を示すと法輪功についての活動ビラを渡してくるなどひっそりと活動を継続しているというわけだ。
紙幣には、「法輪大法は素晴らしい」「本当によい事実」「中共は滅びるべし」などが書かれている。不思議なことに1元や10元の小額紙幣に印字されたものが多く、50元や100元紙幣では、ほとんど見かけない。
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複数の中国人へ印字された紙幣を見せて知っているかと聞くと、全員知っていた。続いて、どう思うかも尋ねると、「何とも思わない」や「怖い存在」など語ってくれた。
また、「お金だから捨てるわけにもいきませんし、財布に入れないわけにもいきません。印字が小額紙幣に多いのは、”法輪功は庶民の味方だ”とアピールする狙いがあるんじゃないでしょうか」とも教えてくれた。
創始者の李氏が吉林省出身のため、吉林省、黒竜江省、遼寧省の東北3省に学習者が多かったと言われる。その吉林省出身の男性は、法輪功の活動に共感する中国人はいないと語る。
「法輪功に共感する人は、ほとんどいないでしょうね。政府や政治へ不満を持つ一定の人はいるでしょうが、反政府活動のアピールだけだと魅力を感じないんですよ。なぜなら、特に多くの都市の中国人は、自分たちの生活水準が向上して、多少なりとも豊かになったことで政府を肯定的に評価しており、国家転覆や革命による混乱なんて望んでいる人はいないからです」
日本人が聞いたとしても、中国国内だけにこれが100%真意ではないかもしれないが、経済成長によって貧しい人らが新興宗教に頼らざるを得ないというような状況は確かに変わっているのかもしれない。
法輪功は、李洪志氏が1992年から活動を始めた気功とされ、当初は、中国政府推奨で愛好者(学習者と呼ぶ)を増やしていくが、江沢民政権時代の1999年に邪教として禁止されて現在に至る(李氏は禁教前にアメリカへ移住)。今もなお法輪功に関するサイトは、日本の法輪功関連サイトも含め中国からは一切アクセスできないようになっている。
しかし、共産党政権は警戒心はいまだ持っているようだ。というのも、中華人民共和国駐日本国大使館のサイトに下記のような法輪功についての記載があるのだ。
法輪功は、日本語公式サイトによると正式名称は、法輪大法(中国語読みでファルンダーファと呼ぶように推奨している)という。日本でも、2004年に日本法輪大法学会としてNPO法人認可を受け活動しており、2000年くらいから駐日中国大使館前で抗議行動を行っている姿などでもご存知の人もいるかもしれない。
----------- ”「法輪功」とは、いったい何か。一口で言えば、中国の「オウム真理教」です。その教祖は現在アメリカにいる李洪志という人物です。「法輪功」も「オウム真理教」も他のカルト集団と同様ですが、教義や教祖への絶対服従と絶対崇拝を要求し、信者にマインドコントロールを施すのです。……”(http://www.china-embassy.or.jp/jpn/zt/xjflg/t62971.htm より引用) -----------と、 オウム真理教に例えて説明している。わざわざ大使館の1ページを割いて説明するくらいだから警戒度の高さが伺える。 ちなみに、中国における宗教は、「共産党の宗教弾圧」のイメージもあるが、政府が公式に認めた仏教、道教、イスラム教、プロテスタントとカトリックの4宗教は、宗教活動が寺院や教会など決められた施設内のみで許され施設外での活動は一切禁止されているものの、ミサなども行われている。 公認された4宗教以外にも地域や民族に根付いている民俗宗教や価値観、習慣へ影響を与え広く継承されている儒教などもある。 法輪功の活動をしていると判断されると公安(警察)に拘束される恐れがあるので、出張や旅行で訪れた中国で法輪功のビラなどをうっかり受け取らないように注意したい。<取材・文・撮影/我妻伊都>
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