残念すぎる大塚家具株主総会、本当の勝者と敗者

 日本全国の注目を集めた大塚家具の株主総会は、すでに明らかになっているとおり、大塚久美子社長の会社側提案が61%の支持を集め、創業者であり父でもある大塚勝久会長の株主提案を退けることに。株主総会を舞台にした世紀の親子喧嘩は娘の勝利で幕を閉じた。

大塚家具 振り返っておくと、その勝敗を決したのは、経営者らしからぬ勝久氏の言動だったといえるだろう。東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏が話す。

「久美子氏が配当を倍の80円に引き上げると言ったのち、対抗するように勝久氏は3倍の120円に引き上げると言い出しました。大塚家具の売上高は2003年をピークに右肩下がり。前期は営業赤字に転落するなかで増配というのもおかしな話ですが、さらに上乗せして3倍増を表明した勝久氏の経営センスを疑う投資家は多かった。その証拠に勝久氏を支持したのは、フランスベッドなどの取引先の株主ばかり。勝久氏のほうが高付加価値商品の販売に注力するといっているのですから、メーカーが支持するのは当然でしょう。一方で、銀行、生損保、投資ファンドからはそっぽを向かれた。勝久氏よりは久美子氏のほうが、まだまっとうな経営センスを持っていたと判断されたわけです」

 この増配問題に関しては、総会中、個人株主からも厳しい質問が飛んでいた。「長年の株主であります。皆勤賞といっていいほど出席しております」と前置きした株主が、以下のように勝久氏を諌めたのだ。

「年間配当120円。それも3年間? そんなことをしても先がない。内部留保を使い込んじゃったらどうするの? 株主としては配当がたくさんもらえるのはありがいよ。でも、利益誘導でしょ。勝久会長が筆頭株主なんだから。自分たちの配当を返上して、その分ほかの株主に回しますよっていうことだったらわかるけど」

 この株主は、過去の勝久氏の言動に関しても苦言を呈した。

「勝久会長に意見があります。あなた、(2007年の)インサイダー取引が発覚したときに私が(株主総会で)質問したら、『詳細を知らないくせに余計なこと言ってくれるな。黙ってろ』みたいな態度で、食って掛かるような姿勢で返事をしてきましたよね。そんな人に、コンプライアンスだなんだと言う資格はありません。心の中ではどう思っているかわかりませんからね」

 これに対して、質問に立った勝久氏は「社員は私に(社長を)やってくれって言ってきています。復活は私しかできないと思ってる。私は120円でも配当できるんですよ。業績を上げられるんです」と主張したが、失笑が漏れることに……。株主総会に出席した40代の株主が話す。

「勝久会長のあとに、奥さんの千代子相談役が『母親でございます』と質問に立ったのですが、中立の立場を表明していたのに、この方もただただ感情的(苦笑)。『(クーデターを起こした1月の)取締役会のあと、あなた(註:久美子社長)、すぐにブランデスさん(大株主のブランデス・インベストメント・パートナーズ)に電話しましたね』『電車の吊る……宣伝(中吊り広告のこと)を出したときは、お客さんから苦情があった9日か10日で下げましたね』と、ひたすら久美子社長の悪口を言うものだから、たびたび『そんな話、聞いてないよー』『見苦しい!』『時間の無駄!』と野次が飛んでいました。それでも千代子さんは『いえ、言わせてください!』『社員さんをイジメないでください!』と絶叫するから、みんな苦笑しっぱなし。あれで、久美子さんに同情票がごそっと流れたと思います……」

 総会は、相次ぐ“大塚一族”の感情的な言動で久美子氏有利に動いていてしまったのだ。が、久美子氏に批判的な意見が挙がったのも事実。総会に出席した60代の株主が話す。

「質問に立った株主は、口を揃えて『必ずしも久美子社長が正しいとも思えない』と言っていました。実際、売り上げは下がりっぱなしですし、利益も低空飛行。過去の久美子さんの実績を見ても、誇れることはないんです。一人の株主が質問で追及していましたが、大塚家具の社員持ち株会は勝久会長を支持したという事実もある。久美子社長は『(社員持ち株会の)棄権票が40%もあったこともご理解頂きたい』と弁明していましたが、従業員との信頼関係が築けていない様子も見えました。だから、私は折衷案として、取締役選任議案のマークシートには、会長側についている勝之さん(勝久氏の息子)の名前にもマークしておきました」

 株主総会の運営を巡っても、株主からは批判的な意見が聞こえた。

「3時間を超える長丁場にもかかわらず、お茶一杯出ないんですよ? ある株主がそのことを批判したら、『席の後方に飲み物を用意した』と。見たら、ファミレスでよく見るようなドリンクバー。当然、総会が始まってから飲み物を取りにいくこともできないので、取締役選任議案の集計作業を行う空白時間にしか取りに行けず、大行列していました……。これだけの時間、拘束して、手土産もない。ノベルティグッズでもせんべいでもいいから、なんか配ればいいのに、会社案内だけ。醜い親子喧嘩を見せられて本当に疲れる株主総会でした」(前出40代の株主)

 パパ、ママ、娘にもダメ出しが続出したとなれば、実際には両者痛み分けか。だが、実はひときわ厳しい追及を受けた人物が別にいた。それは、勝久氏の息子の勝之氏。古くからの株主が以下のようにつるし上げたのだ。

「勝之くん、あんたもあんただ。自分で(社長の)器じゃないのはわかるでしょ。親父さんがいないと、どうしようもないでしょ? だったら、(君が)親父さんを説得しなさいよ。(中略)君も修業を積まないと。一番重要な立場にあるのは勝之くんなんだよ。千代子相談役じゃない」

 これに対して、別の株主からは「勝之さんはいい顔してる」と妙なフォローも入ったが、総会中、勝之氏が終始バツの悪い顔をしていたのは言うまでもなし……。

 となれば、今回の大塚家具騒動の勝者とは一体、誰だったのか? 別の40代の株主が話す。

「結局、得をしたのはほんの一部の株主だけでしょう。(大株主だった)ブランデスなどは、総会前に高値で売り抜けていますからね。総会で私の隣にいた株主などは、取締役選任議案で久美子さんのほうが勝ったと分かった瞬間に、スマホで大塚家具を空売りしてしこたま儲けたようです。あとでチャートを見ると、ニュースで『社長側勝利』と報じられる直前から、大塚家具の株価はガクッと下げて、すぐに切り返して急騰しているんです。おそらく、より高い配当を出すと言っていた勝久さんが敗けたことで、瞬間的には売りが増えたけど、長い目でみれば親子喧嘩は続きそうなので、久美子さん、勝久さん両陣営による株の買い入れが増えて株価は高くなるという見方が広がったのでは? まあ、私のように1万円台で株を買った(3月31日終値は1500円)株主には、もはや含み損を取り返す術はありませんが……」

 スマホトレードの普及でそんな小ズルイ投資家が近年増えているようだが、もちろんルール違反なので真似せぬように……。 <取材・文・撮影/池垣完>

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