壊れたままの風車は訴える――自治体の再エネ設備が“ガラクタ”になる理由

 福島第一原発の事故を受けて、太陽光発電とともに日本でも広がりつつある風力発電。しかし、やり方を間違えれば再エネでも“ガラクタ”の山を生む危険性がある。それを訴えているのが、沖縄県糸満市で壊れたまま放置されている3基の風力発電機だ。なぜこのようなことが起きたのか? そこからは、従来の無駄な公共事業を生む仕組みと同じ構造が見えてくる。

2011年7月に停止したまま現在まで放置

壊れたまま放置されている、糸満市の風車

 糸満市で問題になっているのは、2001年に合計4億円(自治体予算とNEDOの補助金が2億円ずつ)で建設した3基の風車だ。出力は1基600kWで合計1800kW。自治体が主体となり、経済産業省が所轄するNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金を活用した。  この風車が壊れた理由は、沖縄に毎年やってくる強烈な台風。建設から数年後から台風が来るたびに壊れ、2005年以降は通年で売電収入を修繕費が上回るようになってしまった。その赤字を埋めるのは市民の税金なだけに、地域での評判は最悪だ。  その後、風車がデジタル放送の受信障害を引き起こしていたことも問題となり、2011年7月以降、現在(2015年3月)まで停止したまま。撤去する予算もないため、無惨な姿で放置されているというわけだ。  この止まった風車を見れば、「やはり再エネは頼りにならない」と考える人が多いかもしれない。しかし沖縄に台風が来るということは誰でも知っていること。きちんと対策さえとれば、被害が出ないようにすることも可能だ。

糸満市役所に設置された太陽光パネルも、まったく採算がとれていない

 この風車の問題は、自治体が経産省の補助金ありきで設置したことから起きている。自治体や経産省の担当者は、「こんなに立派な設備を作りました!」というわかりやすい結果が早くほしかったため、作った時点で満足してしまったのだ。  設置した後、長年にわたって地域のためにどう活かしていくのかといったビジョンや、公益の視点が欠けていた。これは再エネが役に立つかどうかという話とはまったく関係がなく、無駄な公共事業と同じ構造で起きているにすぎない。  ちなみに糸満市のこの風車は、資源エネルギー庁のホームページ「次世代エネルギーパークにでかけよう!」では現在(2015年3月)も先進事例として紹介されている。

原因は自治体が単独で進める「補助金ありき」の政策

 筆者は全国をめぐって再生可能エネルギーの取材をしているが、この例に限らず、自治体とNEDOなどが出資して建設した設備では、このような例が山のようにある。大きな予算を割いて再生可能エネルギーの設備を造っても、何の役にも立たないガラクタの山が築かれていくばかり。それを防ぐためには、建設プロセスで情報公開を行い、そのプロジェクトが地域や住民のためにどう役に立つのかという視点が欠かせない。  地域主体の再生可能エネルギー導入を進めてきた「環境エネルギー政策研究所」の研究員である古屋将太氏はこのように言う。 「糸満市のケースは失敗する典型的な例ですね。自治体が単独で補助金ありきの政策を進めると、たいてい失敗します。そのプロジェクトに地域の人々がかかわり、便益とリスクを精査したうえで進めることが重要です」  再生可能エネルギーを進める際にも、予算や設備の規模ありきではなく、まずその地域にとって何が大事なのかを議論する所から始めるべきだろう。 <取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
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