雪国まいたけのTOBにインサイダー疑惑。創業者を追い出すために画策された!?

大塚家具創業者とその娘によるプロキシーファイトが注目を浴びる中、創業者vs現経営陣&米投資ファンドでバトルを繰り広げている企業もある。それが、雪国まいたけ。銀行をも巻き込み、現経営陣の優勢が伝わるが一方で、インサイダー取引が疑われるやり取りも……。闇株新聞氏が不可解なTOBの実態をあぶり出す。

創業者を追い出すために画策された雪国まいたけのTOBにインサイダー疑惑浮上

(ブログ&有料メルマガ管理人「闇株新聞」氏)
TOB

2月23日に発表されたTOBに関するリリース。「事実(予定)」など表現があいまい。BCJ-22とはベインキャピタルが用意したTOB用のペーパーカンパニー

 2月23日に米投資ファンドのベインキャピタルが、雪国まいたけに対してTOBを行う「予定」であり、雪国まいたけはそのTOBを受け入れる「検討」をしているとのIRが出された。  翌24日には雪国まいたけの取締役会がTOBへの賛同を決議し、同日から4月6日までを買い付け期間としてTOBが開始された。予定通り自己株を除く全株を買い入れると88億円ほどの投資となる。  雪国まいたけの創業者である大平喜信氏は’13年11月に過年度の不適切な決算処理の責任を取って代表取締役社長を辞任したものの、資産管理会社を合わせて57%を保有する大株主の立場から経営に関与を続けてきた。  今回も大平氏の求めにより、新たな取締役を選出するための臨時株主総会の開催が裁判所から許可されていた。それではTOBは不可能のはずである。  ところが2月23日に大平氏と資産管理会社の持ち株を担保に融資していた第四銀行など6行が担保権を行使して全株を取得してしまい、同時に全株をベインキャピタルのTOBに応募すると発表してしまった。  何かとコンプライアンス上の問題がある創業者の大平氏が今後も雪国まいたけの経営に関与することは好ましくなく、ベインキャピタルによるTOBは好ましいとするのが一般的な報道だ。  ところがこのTOBには「とんでもない問題」がある。  まず、未公表のTOB銘柄を事前に買い付けることはインサイダー取引に該当する。冒頭に書いたTOBの公表が回りくどいのはここを回避するためと考えられるが、第四銀行ら6行は明らかに公表前の2月20日にTOBへの応募予約契約を締結している。  また、ベインキャピタルのような投資ファンドは、普通は自己資金が投資額の3割程度で残りは借り入れで賄う。問題はそこからで、TOBが成功するとこの借り入れはすべて雪国まいたけにツケ回され、雪国まいたけの自己資金や将来の現金収入から優先的に返済される。  そのときには雪国まいたけは上場廃止になっているため、誰からも見えないところで資産売却、人員整理、貴重なまいたけの栽培ノウハウの資金化など「何でもアリ」となり、最後は再上場益まですべてベインキャピタルに独占される。 ⇒【後編】に続く https://hbol.jp/29885 【選者】「闇株新聞」氏 闇株新聞’10年にブログ「闇株新聞」(http://yamikabu.blog136.fc2.com/)を創刊。管理人は大手証券においてトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった経験を生かして記事を執筆。特に’11年10月の「オリンパス事件」や’12年3月の「AIJ投資顧問事件」で専門家もうなる詳細記事を書いて話題に。’12年から有料メルマガ「闇株新聞プレミアム」(月額2600円)を開始。現在、単行本『オリンパスの光と影』(仮題)を執筆中
闇株新聞 the book

刺激的金融ブログ「闇株新聞」主筆が書き下ろす、為替、株、日本国債の今後

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会