東京の焼き鳥店『鳥波多゛』がタイで大人気。現地企業との根強い交渉の末に
http://www.betagro.com/)」と直接契約し、鳥波多゛だけのために仕分けた鶏を入れることだった。
しかし、日本でも決して全国区ではない鳥波多゛をタイの企業が知っているわけはなく、当初は交渉が難航したという。
「最初は2012年中に開店予定でしたが、ベタグロとの契約がうまくいきませんでした。オープン前で店舗もないですから、向こうからしたら、誰? という感じで、なかなか契約できず、結局説得に1年かかりました。本店にはこれが通らないとタイでは成功しないと伝えて、なんとか了承を得て交渉を続けましたよ」
バンコク店店長の田中誠氏は当時の苦労についてそう語る。
タイの飲食店が仕入れをするのは商社や卸問屋から配達してもらう方法と、市場で直接買い付ける方法がある。丸のまま購入し自分たちで切り分けるか、問屋や市場で適当に切り分けたものを使用するわけだ。
鳥波多゛がベタグロに依頼したのは、ベタグロの農場が安全に育てた鶏を彼らの工場にて鳥波多゛専用に職人がレバーやもも肉など各部位に分け、その場で真空パックにすることだった。そのため、日本でも評判の希少部位各種もタイで提供できるし、レバーや肉を生で食べることだってできる。他店とは比べものにならないくらいに品質も鮮度も極上の肉を仕入れることに成功したのだ。
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他店とは違う入荷方法を採ることで差別化にも成功し、今ではベタグロ社にも認められてベタグロ推薦の日本食店として公式サイトに紹介されるようにもなった。
ただ、この入荷方法はひとつ難がある。切り分けるのは職人の手に頼るので、工場が休みの日に入荷できなくなる点だ。
「毎週月曜日と祝祭日の翌日は内臓系、鶏のお刺身の提供はできません。また、工場が3日以上止まる場合は当店も休むことになります」
年末年始やタイの旧正月(4月中旬)も工場が完全に止まるため、かき入れ時であるのに鳥波多゛も休まざるを得なくなるのである。
とはいえ、鳥波多゛は平日でも常時満席という超人気店になっている。これは、間違いなくバンコクに進出してきた日本の飲食店では大成功の部類に入るだろう。
このように、いまやタイの日本食店は、「味」で勝負だけでなく、タイのマーケットやビジネス習慣を知り、その中で自らルートを切り拓くだけのパイオニア精神が必要になっているのだ。
今や、タイの飲食業界全体は世界的に見てハイレベルなビジネステクニックが必要なエリアになっている。和食ブームという背景があれど、生半可な味や戦略ではうまくいかない。それゆえ、経営側は大変だろうが、現地在住の日本人や日本食好きのタイ人といった「食べに行く側」からすると非常にありがたい話である。
<取材・文・撮影/高田胤臣 取材協力/鳥波多゛バンコク http://www.facebook.com/Torihada.Surawong>
2006年から政情不安が続き、2011年には洪水被害などがあったにも関わらず、在留日本人の数も増加の一途を辿るタイ。現在では日本大使館への在留届数だけで6万人にもおよぶ。
そのため、ビジネスも日本人との間だけで完結できるので、顧客ターゲットを日本人だけに特化している店も多い。そんな中にあって、特に和食ブームのタイでは飲食店は日本人だけでなくタイ人も取り込める業種だ。タイ人富裕層の金払いのよさは爽快感すらあって、彼らの心さえ掴んでしまえば東京の和食店よりも高くたって気持ちよく帰ってくれるのである。
2000年前後はまだ今ほど日本料理店が多くなかった。それゆえ、素人でも「日本人」店主というだけで人気店に仕立て上げることだって可能だった。しかし、それも今は昔。現在はバンコクにビジネスチャンスを見出した大手やプロの料理人がたくさんタイに来ているため、競争も激化しており、なによりパイの食い合いが起きているため素人が飲食店経営に参入するのはおろか、プロでさえも人気店になるのが難しくなった。日本の有名店も出店に失敗して撤退ということも珍しくないのである。
そんな日本料理店の競争が激化するバンコクにやってきた、東京で人気のある焼き鳥店『鳥波多゛(とりはだ)』がなかなか好調である。
日本にある本店では契約農家から軍鶏を入手し提供するが、タイは闘鶏の本場とはいえ軍鶏を大量に供給できる農園はほぼない(※余談だが、「軍鶏(しゃも)」の名前は当時のタイの旧名・シャムに由来する)。ブロイラーと違って成長スピードが遅いので量販には向いていないため、今では本場の方が地鶏を入手しづらいのだ。
そのため、軍鶏ではなくてもいい状態の鶏肉を得るため、鳥波多゛が取った仕入れ手法は、タイで頭角を現しつつあるアグリビジネス企業「ベタグロ(
(Twitter ID:@NatureNENEAM)
たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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