友達にはなれても恋人になれない――【石原壮一郎の名言に訊け】
2015.02.21
Q:好意を抱いた女性を食事に誘って、それなりに話が弾んで仲良くはなれても、それ以上の関係、たとえば深い仲になって付き合うとか付き合って深い仲になるとか、という方向に進展しません。本音を言えば、欲しいのは女友達ではなくて恋人なんです。でも、どういうタイミングでそういう話を切り出せばいいかわからないし、なまじ仲良くなってしまうと切り出しづらいっていうのもありますよね。友達から恋人に変わる境目の飛び越え方を教えてください。(新潟県・28歳・公務員)
A:「友達」「恋人」「境」という言葉の並びを見て、若かりし頃の郷ひろみの歌を思い出すのは何歳以上でしょうか。あの歌は「境」を決めた若者が、哀愁によろしくと挨拶する内容でした。あらためて考えると、それはいったいどういうことなのか……。すいません、関係のない昔話でした。
3度目のデートで話を切り出して、「もっとお互いのことを知ってから」とか何とか言われたら、世界の小津安二郎もこう言ってるんだ、今日はラストチャンスなんだ、という論法でさらに説得を重ねましょう(遠回しに断られている可能性も大ですが)。「3度目のデートに関する定説」がふたたび広まれば、若者もそれなりに肉食化してくれるでしょうか。
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いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
今日もお友達や近所の頼りになる方々が出払っているので、自分で答えさせてください。たしかに、ベストのタイミングなんてものを計っていると、身動きが取れなくなるでしょうね。どうやらあなたは、恋人が欲しいと言いつつ、フラれることや「えー、なに言ってんの」と引かれたりすることを怖がっているようです。そりゃまあ、よっぽど図太い神経を持ち合わせていない限り、誰だって怖いですけど。
日々痛感していますが、人間、締め切りがないと何もできません。日本映画の巨匠・小津安二郎は、数多くの名作だけでなく、こんな言葉も残してくれています。
【男女の仲というのは、夕食を二人っきりで三度して、それでどうにかならなかったときはあきらめろ】
かつて男性誌で「恋愛マニュアル」が盛んだった頃は、「彼女をホテルに誘うのは3度目のデートで」というのが定説でした。もしかしたらその根拠というかルーツは、小津安二郎のこの言葉だったのかも!? それはさておき、2度も3度もデートしているのに、「この人と、どうにかなりたい!」という気持ちが起きなくて、向こうからもそういう気配が感じられないようなら、縁がないと思っていいでしょう。
「仏の顔も三度まで、境目を飛び越えるのも三度目まで」と心に刻んで、勇気を振り絞りましょう。「まだ本当に好きかどうかよくわからないし……」なんて言って、行動を起こせない自分を甘やかしている場合ではありません。前に進むために大切なのは、とにかく行動を起こすことです。「四の五の言うな」とは、まさにこのことですね。
たとえフラれても、その経験と行動を起こせた自信は必ず次につながるでしょう。また、小津安二郎は【豆腐屋にトンカツを作れというのは無理だよ】とも言っています。彼が言ったのは映画のジャンルのことですが、恋愛も同じ。相手が求めているものが自分にはなかった、トンカツがお望みならよそに行ってくれ、と思ってしまえば、自分を丸ごと否定された気持ちになることもありません。こっそり「お前なんて、豆腐の角に頭ぶつけろ!」と毒づいて、次に進みましょう。男女の仲は、難しく考え出すとロクなことはありません。
【今回の大人メソッド】3度目のデートに挑む場合は、お互いに覚悟を固めたい
この連載の前回記事
2015.02.09
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