微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望
前回に引き続き、表情分析の大家であるディビッド・マツモト(David Matsumoto)博士にインタビューさせて頂いた様子をレポートします。
今回は、AI表情分析の妥当性、マスク越しの表情読みとりのコツ、オンラインにおける表情の役割について伺ったことを紹介します。
ーーAIを用いた自動表情分析アプリの妥当性や活用法についてご意見をお聞かせ下さい。
「私は、AI、コンピュータテクノロジーを用いた表情分析の能力をほとんど知っているつもりです。私の知っているテクノロジーの中で微表情が計測できるものはありません。全くと言ってよいぐらい、ないです。
数年前、アメリカ政府が出資して様々な表情分析テクノロジーに関する研究開発プロジェクトがありました。私は、当時、トップにあった3つのソフトをテストするように依頼されました。
真偽を話している人物を撮影し、その表情や微表情、シュラッグなどのジェスチャーを全てコーディングしました。
コーディング技術を持つ専門家の視認では、真偽を明確に区別することが出来ました。しかし、ソフトの正解率は、50/50でした。チャンスレベルです。多くの開発元は「ソフトには妥当性がある」と言いますが、多くは静止画の表情を基にしたものであり、その分析結果から主張しているものです」
「しかし、ご存じのように表情は、実験で用いられている静止画の表情のように明確に表れるとは限りません。
また、いろいろ複雑な動きがあり、余計な動きもあり、そんな中に微表情がパッと出て消えてます。
こうした微表情を抽出できるソフトは、私の経験上ありません。微表情を一番検知できるのは人間です。ですので、微表情を読みとれる人間を訓練しているのです。このように私は確信しています」
<著者追記>
例えば、ソフトを用いて、眉が中央に引き寄せられ眉間にしわが寄せられる顔の動きを計測したとします。計測するたびにソフトがこの動きがありますよと表示してくれれば、信頼性が高いソフトということになります。
一方、この動きの意味は、怒りや熟考(他にもあります)です。この動きを検知したソフトが、この動きをした人物が本当は怒りの気持ちを抱いているのに「熟考」と表示させれば、逆に考えているだけなのに「怒り」と表示させれば、妥当性は低いソフトということになります。
筆者の清水が関わるプロジェクトでは、この妥当性問題について慎重な検討をしていますが、国内で表情分析ソフトウェア開発や利用している多くの方々と話をしていると、正しく妥当性問題について理解している方は極わずかな印象です。
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。AI表情分析ソフトの真贋について
微表情の検知精度は、AIより人間の方が優秀
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