微表情の世界的権威である、デイビッド・マツモト氏
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。この度、表情分析の大家であるディビッド・マツモト(David Matsumoto)博士に表情とウソをテーマにインタビューさせて頂きました。
本インタビューは、2021年4月10日(土)に株式会社空気を読むを科学する研究所主催で開催された「Matsumoto博士の表情とウソの心理学オンラインセミナー」内にて行われたインタビュー及び質疑応答部分を抜粋し、編集し、記事化したものとなります。
インタビューの内容を2回に分けてお送りしたいと思います。今回は、微表情からウソを推測する方法について伺ったことを紹介します。
次回は、AI表情分析の妥当性、マスク越しの表情読みとりのコツ、オンラインにおける表情の役割について伺ったことを紹介します。
最初に、ディビッド・マツモト博士についての紹介です。
ディビッド・マツモト博士は、表情分析、ボディーランゲージ、異文化コミュニケーション、ウソ検知の分野で世界的に著名であり、多産な研究者です。長年、ポール・エクマン博士と共に研究され、現在、サンフランシスコ州立大学の心理学教授として研究されています。
また、研究者の側面だけでなく、ご自身の会社、Humintellの代表取締役を務め、研究から得られた科学知見を実世界に応用し、法の執行官、ビジネスマン、マーケター、マネージャー含め、あらゆる層の方々に使える科学を教授されています。
微表情はウソに伴い生じやすいが、会話による検証が不可欠
ーー微表情からどのようにウソを推測するのでしょうか?
微表情とは何なのか、というところから始めねばならないと思います。諸説ありますが、私は微表情を「0.5秒以下持続する感情の現われ」と定義しています。
隠そうとしている、抑えようとしている感情があるとき、抑制が効かなくなり、急に出てくる表情があります。これが微表情です。しかし、感情とは言っても感情は認知と密接なつながりがあります。したがって、広くとらえれば、感情と認知的な働きに関する表情(著者注:感情とは、いわゆる喜怒哀楽等のことです。認知とは、熟考や混乱、退屈等のことです)の抑制、これが微表情だと思います。
ウソを推測する上でこうした微表情を観察しますが、微表情に限らず、特定の非言語サインがあったからと言って「ウソである」と即断するのはいけません。
例えば、今みなさんは、一生懸命私の話を聞いてくれていますが、同時に色んなことを考えています。「朝ごはん美味かった」とか「これから何をしようか」とか「昨日は眠れなかった」とか、意識的・無意識的にも色んなことを考えています。
微表情含む非言語サインは、そういうようなことの現れかも知れないのです。ですので、微表情を見つけた場合、ウソかどうかすぐに判断するのではなく、そこから会話が始まる、そこから会話しなくてはいけないと思うんですね。作戦としては、微表情が生じた話題について掘り出さなくてはいけない。どうやるかは状況によって異なります。
<著者追記>
「ただし」とマツモト博士は注釈を加えます。「微表情は多くの場合、ウソを隠しているときに生じるのも事実」とのことです。ウソに関わる他の非言語サインに比べ、微表情がウソに伴い生じる確率は高いと説明されました。
相手が隠そうとしている話題に突っ込むことで、微表情を出させる
ーーウソをつくことによって生じやすい微表情というものはありますか?
ありません。個々人が隠そうとしている内容や感情はそれぞれだから。考え方も様々だから。ある話題に恐れる人もいれば、怒る人もいる、喜ぶ人も、悲しむ人もいる。全て出る可能性がある。研究では、軽蔑、嫌悪、恐れが多いが、経験上、あらゆる微表情がウソに伴い現れます。
<著者追記>
ウソをつくという刺激に喜びを感じる人もいれば、恐怖を感じる人もいる、こうした個人差が色々あるということだと思われます。また文脈に関して、ウソに伴い得られるもの・失うものが大きいとき、微表情が発現しやすいとのことです。ですので、ババ抜きのようなゲームで気軽につくウソに微表情は生じにくいと考えられます。
ーー会話相手の微表情をずっと観察し続けることは大変です。効率的に相手の微表情を見つける方法はありますか?
観察し続けることはもちろん大変です。しかし、スキルを高めれば、普通に会話しながら微表情を見つけることが出来ます。
微表情を学びはじめの頃は、誰もが、相手をジッと観るんですね。柔道で言えば、初段かも知れないですね。1級かも知れない。
しかし、プロフェッショナルに応用する、利用するんであれば、3段4段ぐらいにならないと、つまり、スキルアップして、その場に応じて会話をしながら、普通にリラックスして会話をしながら、微表情を観れるようにならないといけないと思います。だから練習が必要だということです。誰もが最初は考えてしまうんです。しかし、観察しようとすればするほど不自然になる。
効率的に微表情を見つけるには、会話の仕方、インタビューの作戦や方法について勉強する必要があります。相手が隠そうとしている話題に触れなければ、その人はいくらでも微表情を出さずに話せます。どうやってそうした話題に持って行くか、そういう作戦になります。