新型コロナ禍における「専門家」たちの功罪。 感染者数予測を外し続けてもなお起用するメディア

新型コロナ禍でメディアに登場した「専門家」の「翻意」

 新型コロナの蔓延後に名前が売れ、テレビ等のメディアに頻繁に登場するようになった「専門家」に、ウイルス学を専門とする宮沢孝幸・京都大学准教授がいる。彼は、昨年3月28日に公表した情熱的なツイートがバズったことで一躍時の人となり、その後、多数のニュース記事や雑誌、テレビに登場するようになった。  新型コロナ禍での心構えや感染症対策についてまとめたそのバズツイートは確かによく書けており、ほとんど批判のしようのないもので、それを読んだ当時の筆者は、宮沢氏の登場を心強く思ったものだった。  ところが、である。その後、宮沢氏は徐々に変質しはじめ、違和感を覚えるような言動を繰り返すようになる。昨年6月に大阪府の新型コロナ専門家会議に参加した際には、大勢の参加者がいる会場にマスク無しで入り、「府の緊急事態宣言はほぼ無意味だった」という趣旨の発言をした。昨年12月にはWEB媒体やテレビなどで、「Go To停止は意味がない」、「外出自粛も移動制限も必要ない!」とまで主張している。  さらに、昨年9月17日の「週刊新潮」では、新型コロナ感染による高齢者の死について、「高齢者も死亡リスクが高いとは言いきれません。危険なのは基礎疾患がある場合です。あえて言えば、もともと死亡リスクを抱えていた人の死期が、新型コロナに感染して少し早まっただけの話」とコメント。同12月12日頃にはTwitterにて、コロナウイルスを用いたバイオテロを教唆するようなツイートをしている(そのツイートは後に宮沢氏によって削除されたが、アーカイブが残されている)。  このような様々な問題発言・問題行動の結果、宮沢氏の所属する京都大学には多くの苦情が寄せられることとなり、昨年12月16日にはとうとう、京都大学から宮沢氏に対してSNS自粛要請が出されるまでになった。しかし、残念なことに、その後も同氏の振る舞いはほとんど改まっていない。あのバズツイートを知る人たちからは今、「あの頃の宮沢先生はもういない」という声が繰り返し聞かれるようになった。

はずれ続ける宮沢准教授の感染者数予測

 ここからは、宮沢氏の問題行動の一つである「感染者数予測」について具体的に解説しよう。上で複数の例を挙げたように、宮沢氏の問題発言・問題行動には様々な種類のものがあるが、ここで取り上げる感染者数予測は、それらの中でも特に正誤が分かりやすいものである。他の問題ある言動については別の機会に解説しよう。  大阪府の新型コロナ専門家会議に出席した昨年6月頃から、宮沢氏は頻繁に感染状況の「予測」をするようになる。明日の東京の感染者数は何人くらいになるだろう、大阪の感染者数は何月何日くらいにピークアウトするだろう、といった具合だ。ここで、「ピークアウト」というのは、感染状況が悪化し増加を続けていた日毎の感染者数が、減少に転じることを意味する。  宮沢氏によるこれらの予測は非常によく外れることが知られている。最近の例を紹介しよう。今年3月6日、読売テレビ「あさパラ!」で1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)の緊急事態宣言延長について聞かれた宮沢氏は、「全くの愚策と思っています」と述べたあと、次のような予測を示した。  「(3~4月に感染者数の増加があるとは)思わないですね」  「(3~4月に)絶対に上がらないとは言えないけれど、次に上がるとしたら6月ぐらいと思っている」  これらの予測はまったくの間違いだった。この後、とりわけ東京で感染者数の増加が目立つようになり、4月12日には23区等に「まん延防止等重点措置」が適用されたが、それでも増加は止まらず、4月18日現在では「緊急事態宣言」の要請が検討されるまでになった(参照:東京都 小池知事「緊急事態宣言の発出 政府に要請も視野」|NHK)。
図.東京の感染者数

図.東京の感染者数。2021年4月18日のNHK記事 より

 4月16日には残りの3県にも「まん延防止等重点措置」が適用されることが決定し、首都圏全体が緊迫感に包まれる状態となった。さらに、1都3県からは外れるが、「あさパラ!」が放送された大阪では3月初旬に感染者数が増加傾向に転じたのち、感染が急拡大。4月にはこれまでにないほどの深刻な状況に陥った(参照:大阪府 重症患者数が病床数超える 医療提供体制 深刻な状況に|NHK)。
図.大阪の感染者数

図.大阪の感染者数。2021年4月18日のNHK記事より。

 宮沢氏による予測は完全に間違いだったのだ。
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風邪コロナとCOVID-19の不適切な比較
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