参院広島再選挙に「買収された議員が関わるかどうか」は、最後までお茶を濁された

買収事件の逆風は想定以上、“保守王国”の広島で自民が苦戦

西田英範候補(右)と岸田文雄県連会長(左)。4月3日の広島市内での街頭演説

西田英範候補(右)と岸田文雄県連会長(左)。4月3日の広島市内での街頭演説

 買収事件で逮捕された河井案里・前参院議員の失職に伴う「参院広島選挙区再選挙」(4月25日投開票)は、自民公認の元経産官僚の西田英範候補(公明推薦)と野党統一候補のフリーアナウンサーの宮口治子候補がほぼ横一線のまま、最終盤に突入した。  トリプル選で一勝一敗一不戦敗を狙う菅政権は、この広島再選挙を最重要視。他の2補選は、吉川貴盛・元農水大臣の辞職による北海道2区補選では自民党が候補擁立を断念、参院長野選挙区補選は故・羽田雄一郎前参院議員の弔い合戦で、野党が有利であるためだ。  永田町ウォッチャーはこう話す。 「広島の再選挙で敗れてトリプル選全敗なら、『菅首相では選挙が戦えない』と菅降ろしが始まる可能性は十分にある。地元で陣頭指揮を取る岸田文雄・県連会長の総裁選再チャレンジの芽もなくなるだろう」  ただし広島は“保守王国”で、基礎票では与党が野党を大きく上回る。再選挙のきっかけとなった2019年の参院広島選挙区(定数2)でも、自民二候補の得票率の合計が57.5%に対して、野党系二候補の得票率は39.2%と1.5倍弱の差があった。  しかし、当初は宮口氏の出馬表明が1か月近く遅れたことから西田氏が有利と見られたが、買収事件の逆風は想定以上だった。すぐに宮口氏が追いついてほぼ横一線状態となり、告示後は両陣営ともに「相手候補の背中が見えてきた」と劣勢を訴え、自陣の引き締めをはかる展開になっているのだ。

西田氏・岸田氏は被買収議員の関わりについて曖昧な回答

 もちろん最大の争点は「政治とカネ」の問題。しかし西田氏も岸田氏も買収事件でお金をもらった議員や首長が再選挙に関わるのか否かを曖昧にしている。これを理由に出馬を断念したのが郷原信郎弁護士だった。  広島市内での会見で「現金を受け取った(被買収)自民党議員が選挙運動に関わろうとしている状況では、公正な選挙はできない」と訴える一方、被買収議員に関わらせないようにする具体的措置を明らかにすることを求める質問状(回答期限は3月8日)を自民党広島県連と西田氏に送ったが、無回答だった。そのため期限翌日の3月9日、「公正が期待できない選挙に自らプレーヤーとして加わることはできない」と述べ、不出馬を表明したのだ。  郷原氏の問題提起を西田陣営はどう受け止めたのか。3日後の3月12日、西田氏の事務所開きが行われ、岸田氏が「自民党の信頼回復へ向けた重要な出直し選挙だ」と挨拶したので、終了後の囲み取材で岸田氏に「お金をもらった議員は選挙に関わらないのか」と聞いた。  すると「県民の皆様の信頼回復に対する厳しい目に耐えられる選挙戦をやらないといけないと思っている」と曖昧な回答。西田氏にも同じ問い掛けをしたが、「皆さん(支援者)と相談して」と答えるだけだった。
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お金をもらった人が平気な顔をして選挙に参加している
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