N国、長野県選挙区参院補選で「松本サリン事件」を揶揄する政見放送。迷惑行為がウケると勘違いしただけの集団に選挙を愚弄させてはいけない

供託金300万円を払ってやりたいこと

 N国党の候補者が参院補選で当選する確率は、前述の通り。当選しないどころか、供託金すら返還されないレベルで、300万円の没収は免れないことだろう。  どうして300万円を没収されるとわかっていながら、あえて衆院補選や参院補選に立候補してくるのか。それは、ふざけた政見放送をお届けすることで話題になり、より多くの人にN国党を認知してもらうためである。  しかし、N国党の存在は既に多くの人に知られている。もっと言えば、彼らが「ならず者たちの集団」であることまで、しっかり知られている。今さら認知を高めたところで、支持率が回復することもなければ、新たな支持者が劇的に増えることもない。 実際、立花孝志のYouTubeのチャンネル登録者数は、2年前の参院選で当選した後に急増したが、かつてないスピードでチャンネル離れが進んでいる。それでも300万円かけて参院補選に立候補してくる理由。それは、ふざけた政見放送をお届けすることで、今もまだ「話題になりたい」のである。彼らのゴールは、議員になることでも、政治家として世の中を良くすることでもない。ただ「目立つ」ことである。

注目されるために「ハゲ党」に変更する計画

 常人には理解しがたい奇抜な言動を繰り返すことで、「天才」だと思われたい立花孝志は、現在の「NHK受信料を支払わない方法を教える党」という政党名を、今度は「ハゲ党」に変更すると発表した。  アメリカ発の音声配信サービス「clubhouse」に似た「ZATSUDAN」というアプリがリリースされたことを記念し、堀江貴文と立花孝志が約20分間の対談を行い、立花孝志が「ハゲ党構想」を繰り広げたのである。  この新サービス「ZATSUDAN」に参加している人が、堀江貴文や立花孝志のほかに、茂木健一郎、勝間和代、はあちゅう、上杉隆、鴨頭嘉人、箕輪厚介、福永活也という時点で、このプロジェクトの将来をお察しいただきたいものだが、香ばしい人ばかりが集まった新サービスで「ピコーン!」とひらめいてしまったばっかりに、立花孝志が再び暴走を始めようとしているのである。  立花孝志は「ハゲ」という単語のインパクトを熱心に語り、「ハゲ党」と名付けたら、政党支持率の世論調査などが発表されるたび、自民党や立憲民主党などと並び、「ハゲ党」という名前が出ることになり、「どういうことなんだ?」と耳目を集められるという持論を展開していた。しかし、実際のところは「ハゲ党」という名前が気になっても、「立花孝志がやっている政党」だとわかった瞬間に解散である。表向きは「薄毛で悩んでいる人たちの人権を守る」などと言っているが、実際にやることといえば、せいぜいハゲたオッサンの悩みを、ニート寸前のコールセンターのスタッフが聞くだけだろう。時々、立花孝志がYouTubeで「こんな悩みがあった」と報告する程度である。  言うまでもないが、薄毛の悩みは「政治的な問題」ではない。「ハゲているだけで出世できない人がいる」などと言っているが、ハゲた部長や課長はたくさんいるし、ハゲた社長もたくさんいる。もし、N国党のコールセンターに「ハゲが理由で出世ができない」と悩みを打ち明けるような奴がいるのだとしたら、そいつが出世できないのは「ハゲ」が原因ではなく、「N国のコールセンターに相談するような奴」だからである。
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マツコ・デラックスさんの意見は正しかった
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