Chromeの機能で「Protanopia:赤みの差が分かりにくい。赤を暗く感じる。P型(Protanopia、1型)」をエミュレートしてみた際の画面(バナー広告部分は加工済み)
Microsoft Edge のシェアが、8.03%になり3位になった。対して、Internet Explorer のシェアは1.70%に低下した。Internet Explorer と、その他のWebブラウザでは、対応するタグの違いなどがあり、Webページの見え方に差がある。こうしたWebブラウザの互換性問題は、世界全体では収束に向かっている。しかし日本でのシェアはまだ6.9%あり、まだ根強く残っている(
TECH+)。
ソフトウェアやハードウェアが違えば、同じ情報でも表示のされ方や見え方が変わる。それは、コンピューターの世界に限ったことではない。動物の中で、視覚を頼りに暮らすものを見てみよう。たとえば猫は、赤色が分からない。犬、猫、牛、馬などの多くの哺乳類は、緑と青の色覚受容体しか持たないとされている。人間は赤、緑、青の三種類だ。同じ視覚でも、感じる光の波長は種によって異なるわけだ(
WIRED.jp)。
こうした違いは同じ種の中でもある。人間は、視覚を頼りに情報を把握することが多い。その視覚も、個人ごとに多様性がある。そのため、今自分が見ている世界と、他人が見ている世界が同じとは限らない。
こうした違いは、視力を考えてみれば分かる。近いものが見えにくい、遠いものが見えにくいなど、人によって見え方が異なる。
文部科学省の令和元年度の
学校保健統計調査を見てみよう。裸眼視力1.0未満の者は、幼稚園児で26.06%、小学校で34.57%、中学校で57.47%、高等学校で67.64%となっている。また0.7未満の者は、幼稚園児で6.50%、小学校で14.36%、中学校で19.58%、高等学校で17.22%となっている。どれだけ鮮明に見えるかは、人によって大きく違う。
違いは鮮明さだけではない。色もそうだ。全ての人が同じように見えているわけではない。
日本人では、先天的に色の見え方が異なる人が、男性で5%、女性で0.2%いる(
日本眼科医会)。男性と女性で異なるのは遺伝が関係するためだ。そして、国や地域によって、その比率は異なる。
色覚の検査については、平成15年から、学校での定期健康診断から削除され、のちに平成26年に希望者に実施するように改められている。そのため最新の、全国の学校のデータは見つからなかった。今では少し、上述の数字は変化しているかもしれない。いずれにしても、同じ景色や画面を見ていても、見え方は人それぞれというわけだ。
こうした視覚の違いを体験するには、これまでは特殊な眼鏡を使ったり、専用のソフトウェアを利用したりする必要があった。
しかし今ならば簡単にできる。2020年に、Webブラウザで簡単に確かめることができる機能が搭載された。今回は、その機能の話をしよう。
Chrome DevToolsの色覚多様性のエミュレート
2020年3月にリリースされた Google Chrome のバージョン83には、新機能として「Emulate vision deficiencies」が追加された。色覚多様性をエミュレート(模倣)する機能だ(
Chrome Developers)。
使い方を簡単に説明しよう。Google Chrome 右上の「︙」ボタンを押してメニューを表示して、「その他のツール」>「デベロッパー ツール」を選択し、Chrome DevTools と呼ばれる開発者用ツールの画面を表示する。
開発者用ツール内の「︙」ボタン(Customize and control DevTools)を押してメニューを表示して、「More tools」>「Rendering」を選択する。
細かな設定が並んだパネルが表示されるので、下の方にある「Emulate vision deficiencies」のドロップダウンリストから確認したい項目を選択する。
リストには以下の項目がある。最初に同機能が搭載された頃と比べて、「Blurred vision」が増えている。
・No emulation:模倣なし。C型(Common type、一般型)。
・Blurred vision:ぼやけた見え方。
・Protanopia:赤みの差が分かりにくい。赤を暗く感じる。P型(Protanopia、1型)。
・Deuteranopia:赤みの差が分かりにくい。赤を暗く感じることはない。D型(Deuteranopia、2型)。
・Tritanopia:青みの差が分かりにくい。T型(Tritanopia、3型)。
・Achromatopsia:色合いの違いが判別できない。A型(Achromatopsia、1色型)。
それぞれのエミュレートは、実際の色の見え方の多様性に対応している。それぞれの型は、視細胞の状態によって決まる(
J-STAGE)。