住民投票で都構想否決の民意を無視、一元化条例可決で大阪市の財源”カツアゲ”を進める維新

否決されたはずの「大阪都構想」がゾンビのように蘇ってきた

一元化条例可決の直後、囲み取材に応じる松井一郎・大阪市長(日本維新の会代表)

一元化条例可決の直後、囲み取材に応じる松井一郎・大阪市長(日本維新の会代表)

 昨年11月1日の住民投票で否決されたはずの大阪都構想が、今年に入ってからゾンビのように蘇ってきている。代案の広域行政を一元化する条例案が3月24日の府議会に続いて3月26日の大阪市議会でも可決され、潤沢な市の財源が府に吸い上げられることが可能となったのだ。 「日本維新の会」代表の松井一郎市長は可決後に「二重行政のリスクを抑えていくために良くできた条例案」と自画自賛したが、都構想反対派は「民意を踏みにじるような形での条例制定」(北野妙子・自民党市議団幹事長)などと批判。市役所前でも、市民有志が「怒『一元化条例』」「松井 維新 公明は市民の声を聞け」と銘打った垂れ幕を持って、怒りを露わにするデモ行進をしていたのはこのためだ。  住民投票直後の昨年11月13日、筆者は「『都構想』が否決されたというのに、条例化で再び大阪市の財源を奪おうとする維新」という記事で「都構想否決の民意を骨抜き」「二重行政解消の掛け声とともにゾンビのような“カツアゲ条例案”が再登場」などと指摘していたが、維新のツートップ(吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長)はこうした批判に耳を傾けずに、一元化条例可決を強行したのだ。

住民投票で否決されても「選挙で民意を得た」と条例可決を正当化

 しかし松井氏には、住民投票の結果を否定(民意無視)する後ろめたさはまったくなかった。可決直後の囲み取材で「条例成立が総選挙で追い風になるのか」という質問が出たのを受けて筆者が「次期衆院選で今回の条例成立が逆風になる恐れはないのか。住民投票の結果や民主主義を否定する“二枚舌政党”という批判もあるのではないか」と聞くと、松井氏はこう答えた。 「それは政治家ですから、そういう批判もあるでしょう。横田さんはそういう批判をされると思う。でも、その批判を僕らは真正面から受け止めて、国民の皆様に支持を訴える。そういうところから逃げるということは僕にはありません」  可決当日の市議会討論でも「住民投票結果(民意)の否定」「民主主義の蹂躙」と批判する反対意見が続出したが、このことについても松井氏は「民意の否定には当たらない」と反論。「三度の選挙(大阪府知事選や大阪市長選)で二重行政を解消して府市が連携することについては民意を得たと思っている」と、条例案可決を正当化したのだ。
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