感染第4波の東京で観光庁がGoToトラベルもどき事業か!? 謎の格安バスツアーの正体

破格のプライスの理由は……

hatobus

格安のはとバスツアーに記された断り書き

 私は、はとバスが観光を盛り上げるために、赤字覚悟で行うのかと思っていたら、これら完売のツアーには、その公式サイトに次のような断り書きがあった。「特別コース。観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」における事業として実施いたします」。なんと、観光庁の事業だったのだ。  感染が収まっていないこの時期に、地方ではなく、首都・東京で、日帰りとはいえ、県境を越えて東京から他県に行く観光に、素直に説明書きの文面を読むと観光庁が税金を出していることになる。観光庁がカネをだす事業であれば、この内容でも3000円という安値も納得がいく。  ご存知のように、昨年のGoToトラベルキャンペーンは、国がツアー代金の最大50%を、クーポン付与も含めて行う事業であった。しかし、このツアーの代金はどう考えても、通常価格の半額以下の設定だ。それは、はとバスが出すのか?観光庁が税金から出すのか?  観光庁の同事業公募要領を見ると、支援対象経費として以下のような項目が列挙されている。 《観光イベントの実施における支援対象経費》 1 謝金 ・イベントの出演者、司会者等に対する謝金 ※ 出演者等に支払う謝金のうち、各地方公共団体における諸謝金に関する規程に準じた 金額のみ、支援対象経費の対象とする。 2 賃金 ・イベントの準備及び開催に係る事務を補助するために任用する臨時職員の賃金 3 通信運搬費 ・イベントの準備及び開催に要する郵送料、通信料 4 委託料 ・各種イベントの企画・実施に係る経費 ・会場設営、イベントの運営や警備、音響設備の委託などイベント開催に必要な経費 5 効果検証のためのアンケート調査等の実施経費 6 借料・損料・使用料 ・イベント会場の借上、使用にかかる費用 ・イベントの開催にあたって必要な備品や機材等のリース料 7 旅費 ・イベント出演者に対して支払う旅費 ※ 出演者等に支払う旅費のうち、各地方公共団体における旅費に関する規程に準じた金 額のみ、支援対象経費の対象とする。 8 消耗品費 ・イベントの準備及び開催にあたって必要となる消耗品の購入費 (単価が10万円未満で本事業で実施するイベントに限り使用する物品とする) 9 雑役務費 ・送料等雑役に関する経費 10 情報発信費 ・イベントの告知や当日案内のためのパンフレットやチラシ、ポスター制作に係る経費 ・その他、本事業によって磨き上げる観光イベントについて国内外の観光客を誘客するため の広報、宣伝等のための経費 ※ 情報発信・プロモーションに係る経費については、国からの支援総額に比して2割程度を 上限とする。 11 工事請負費 ・電気水道ガス等、イベント会場を設営する上で必要となる工事等の経費  私には、観光庁がGoToトラベル並みのことを、今の東京で行っているとしか思えない。そして「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」が必要だとしても、多くの市民を巻き込んで、この感染状況の東京で税金を使って行うべき、いや税金を使っていないとしても、行うべき事業だとは思えない。都知事も県知事も、県を越えての移動は控えるようにいっているのだ。

変異株も猛威を振るう中でやるべき事業なのか?

 私が穿って考えているだけなのかもしれないが、もう一度申し上げる。もしも、この時期に観光庁が、感染第4波の危機が迫り来る東京都から県を越えていくツアーに、税金を出しているとなったら、私はもうなんといっていいのか分からない。唯一思い浮かぶのは、これは狂気の沙汰である、ということだ。 <文/佐藤治彦>
さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(扶桑社新書)、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』 (扶桑社文庫・扶桑社新書)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)『お金が増える不思議なお金の話ーケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(方丈社)『日経新聞を「早読み」する技術』 (PHPビジネス新書)『使い捨て店長』(洋泉社新書)
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