東アジア反日武装戦線は、三菱重工本社ビルの爆破後、「日帝の侵略企業・植民者に対する攻撃である」と宣言を出す。彼らは、日本の植民地支配と戦争責任を問い直そうとしていたのだ。
日本の戦争責任を告発するため、当初はA級戦犯刑死者を祀る記念碑などを爆破していた東アジア反日武装戦線。しかし、爆弾テロの矛先を企業に向けたことで、一般人を巻き込んでしまうことになった。
(C)Gaam Pictures
キム監督は、「こうした一連の行動について評価するのは難しい」と話す。
「私は、東アジア反日武装戦線のメンバーたちが、行動を起こしたことで考え方が変わったのだろうか、そのことについてどのように感じていたのだろうかということに関心を持っていました。そうしたことを映画を通して見つめてみたいと思ったんです。撮影を終えてみて、そこには普遍性があると感じました。
私自身の20代の頃を振り返ってみると、80年に起きた
光州事件について怒りがありましたし、
全斗煥(チョンドゥファン)政権に抵抗することは正しいと思っていました。学生運動に直接参加したわけではありませんが、共感していました。
世の中が変わっていくという希望や夢を持っていたわけですが、そうしたなかで無謀な行為もあったと思います。たとえ正しい意図を持って行ったことであっても、誰かが犠牲になったり、誰かを傷つけたりすることがあるのではないかと年を取ってから考えるようになりました」
本作は、韓国では2020年に公開されている。監督によると、「『日本でこのような事件があったとは知らなかった』というのが最も大きな反応だった」という。
「韓国国内では、加害者としての日本を問うという事件や動きがあるということがあまり知られていませんでした。そのため、そもそもこの事件をどのように受け止めていいかわからないという反応が少なくありませんでした」
映画は、日本の加害責任について責めたてるような受け止め方をされないように製作したつもりです。しかし一部には、日本に反省を促すような報道もありました」
(C)Gaam Pictures
東アジア反日武装戦線は、日本の植民地主義を鋭く問い返そうとした。しかし監督は、日本を責めるような映画にはならないようにしたという。そして「韓国の加害性についても問い直すきっかけになればいいと思っています」と話す。