2019年12月26日に2年半ぶりに仮放免されたダヌカさんは体重が46Kgにまで落ちていた。頬はこけ、服もダブダブだった
ダヌカさんは収容中に、入管の退去強制令書の発布の撤回を求める裁判を起こしていた。
つまり、裁判所に「ダヌカはダヌカである」との認定を求めたのだ。
仮放免直後の2020年2月25日、ダヌカさんは第5回口頭弁論に出廷。初めて法廷で「私はダヌカだ」との意見陳述を行った。だが直後、鎌野真敬裁判長が突然
「審理は尽くした」と結審を宣言。ダヌカさんの代理人・指宿昭一弁護士は
「本人である証拠を収集中。結審は許されない」として
「裁判官忌避」を申し立てた。裁判官忌避をすると結審は延びる……はずだった。
だが後日、ダヌカさんから
「7月3日に判決が決まった」との連絡が入る。当日「結審はされていない」として、指宿弁護士は出席を拒否。ダヌカさんも傍聴席のほうに座った。無人の原告席に向かい、鎌野裁判長はダヌカさんの撤回請求を「却下する」と告げ、10秒後に退廷した。
筆者は判決文を読んだが「ずるい」と捉えたのは、
裁判所はスリランカ大使館がダヌカさんを本人と認めている点に触れていないことだ。
2020年、ダヌカさんは原付免許をダヌカ名義で取得した。これは、公安と警察は「ダヌカはダヌカである」と認めたということだ。
当然、ダヌカさんはこれを控訴した。その控訴審が3月3日に開催されたのだった。
まずダヌカさんが意見陳述に立つ。それは、収容中に職員たちから
「チャミンダと呼ばれたら返事をしろ」と強要されるなどの屈辱や、うつ病や拒食症に苦しんだ日々をつづったものだった。
だがこの直後、ここでも村上正敏裁判長は突然
「原告から(被告が持っている本人証明となる)文書提出命令の申し立てや本人尋問の申し出がありましたが、合議の結果『必要性なし』と判断し却下することにしました。判決は、4月21日の午後1時30分で指定します」と終結宣言したのだ。
次の瞬間、指宿弁護士が立ち上がり
「ダメです。一審でも尋問は行われていないんです!と訴えた。
「必要性なしとの判断です」
「おかしくないですか。民事裁判で原告の話を聞かないで判断するのは!」
そう抗議している間に、裁判長は会釈の挨拶もなしに扉の向こうへと消えた。だまし討ちのような展開に、ダヌカさんはその後も
「頭が真っ白です」と多くを語らなかった。