―― 福島の子どもの甲状腺がんと放射能は無関係だという立場を国や県は崩していませんが、こうした意見についてどう思われますか?
河合 200人を超える福島の子どもたちががん手術をして、今も苦しんでいます。甲状腺がんの発生率は100万人に1人と言われていますが、福島では38万人に252人出て、そのうち200人以上が手術を受けている。これが過剰診断やスクリーニング効果で説明がつくでしょうか。こうした立場をとる人たちは、調べすぎたから出てきたんだ、調べなければ済んだのにと言います。もし調査、検査を受けていなかったら、今手術を受けた人たちはみんな手遅れで死んでいたかもしれないということですよ。
200超の手術は福島県立医大で行われましたが、彼らは不要な手術を200回以上もしたんですか。そんなことありえないでしょう。実際にがんがあったから手術をしたのですから。
データを取らないということは、甲状腺がんが発生することを隠すための策動です。放射性物質が甲状腺がんを引き起こすことが明らかになると、原発を止めようということになる。それが困る人たちがいるのです。国は絶対に因果関係を認めたくないから、データを取らない、検査をしないということです。
―― なるべく検査をしないという発想は、コロナ対応にも通じると思います。原発を止められない国や社会を変えるために何をしていけばいいですか。
河合 北風と太陽の寓話がありますね。僕らは今まで脱原発を掲げて、北風をずっと吹かせてきました。しかし、太陽によって原発というコートを脱がせる運動も大事です。私は『
日本と原発』という映画で原発の危険性を訴え、北風を吹かせてきましたが、その後自然エネルギーは儲かるということを伝えるために『
日本と再生 光と風のギガワット作戦』という映画を撮りました。後者の太陽アプローチが効いてきている実感があります。
<聞き手・構成 杉本健太郎・記事初出/
月刊日本2021年4月号より>