テレビに出るのが知事の仕事じゃない。コロナ対策でもっと評価されるべき7人の知事

豚コレラの教訓も活かし、国の指示を待つことなく感染防止

◆岐阜県:古田肇知事  保守分裂となった1月の岐阜県知事選では「コロナはただの風邪」のバカ候補を破って知事の椅子を守った。人の往来の激しい愛知県と連携し、愛知県と共同で緊急事態宣言を発令するなど、どこが感染源になっているのかをよく理解している。独自に非常事態宣言を発令したり、飲食店の自粛を呼び掛けたり、自分で考えて手を打っている。第1波の大流行前に厚生労働省とPCR検査キット獲得を目指して交渉を開始するなど、高い危機意識を持って動いており、予算を組みかえて新型コロナウイルス対策に充てるなど、柔軟に対応している。国の指示を待つことなく、率先して感染防止に動いているため、知事としては「仕事をしている」と評価できる。こうした動きは、かつて蔓延した豚コレラの教訓も生かされているという。 ◆福井県:杉本達治知事  全国初となる軽症・無症状感染者向けの一時政策施設を作ったり、発熱外来を設置してPCR検査を実施したり、第1波のマスク不足の時にはマスク購入権を配布したり、手当のない労災非適用の小規模事業者に一律10万円の給付をつけたり、知事の給与をカットしてコロナ財源に充てたり、県独自の政策を次々と打ち出し、医師が選ぶコロナ対策を評価できる知事ランキングで堂々の1位を獲得。SNSでも「福井県は封じ込めよう」とポジティブなメッセージを発信し、県民の士気を高め、さまざまなアプローチでコロナ対策に取り組んでいる。隣の石川県とは雲泥の差である。 ◆和歌山県:仁坂吉伸知事  全国で初めて病院でクラスターが発生した際も、即座に対応して制圧に成功している。積極的にPCR検査を実施する「和歌山モデル」を確立。疑わしきはPCR検査という素晴らしいモデルで、夏から秋にかけて地元経済の持ち直しは全国随一。変異株についても調査をすると発表。国の方針には従わず、軽症者でも入院できるように努めたほか、退院後の後遺症対策にも乗り出している。経済を守るためにも早期発見と早期隔離が大切であることをメッセージとして発信しており、全国で最も新型コロナウイルスに対して意識の高い知事である。最悪の大阪に近いという土地柄、大阪からの流入によって感染者は発生してしまうが、それでもしっかり対応している。

一早い対策で封じ込めに成功する知事たち

◆鳥取県:平井伸治知事  感染者が少ないうちに病床数を増加させ、院内感染を防ぐドライブスルー式のPCR検査を一早く導入。演劇などの文化を守るために無観客開催には助成金を出し、やむを得ない事情で他県から鳥取県に流入した人には外出自粛を要請。甲子園が中止になった時には、高校生のために県独自の大会を用意した。和歌山県と同様、「疑わしきは検査」を徹底し、感染者の早期発見と隔離によって、全国トップクラスの感染対策を実現。全国的に新型コロナウイルスが蔓延する中にあっても、鳥取県は感染者0人の日が続く。どこよりも早く県庁にコロナ対策のチームを立ち上げて組織してきたため、日本で最も感染リスクの低い県の一つとなっている。 ◆島根県:丸山達也知事  東京五輪の聖火リレーに対して苦言を呈したことで一躍有名になったが、現在までに2月23日を最後に3月14日まで感染者が確認されず、0人の日を更新していた(14日に1人出たものの、その後22日までは再びゼロ)。銀行や教習所などでクラスターが発生するも、限定的に封じ込めることに成功。47都道府県で唯一、死者を出していない都道府県となっている。見事に安全なバブルを作り出すことに成功しており、聖火リレーに苦言を呈す理由はよく分かる。県民の命と健康、そして経済を守るためには新型コロナウイルスを蔓延させないことが何より大切であることを十分に理解しているからこそであり、結果を残していることからも素晴らしい知事であると言える。 ◆愛媛県:中村時広知事  高齢者施設などを対象とするスクリーニング検査を大阪府より早く実施すると発表しており、検査には積極的である。本州と離れており、首都圏との往来がそれほど多いわけではないため、四国では全体的に新規感染者が少ない傾向にはある。9月入学が議論された時には、真っ向からド正論の反対意見を述べて一躍有名に。国に対して苦言を呈すことも多い。医療従事者に応援手当金の支給を盛り込むなど、他にはない独自の政策もあった。コロナ対策で給与を返上したこともある。飛沫防止などに補助金を出すなど、丁寧な対応をしている。 ◆熊本県:蒲島郁夫知事  第4波に備えて病床数を大幅に増やすなど、先手の対応をしている。年末年始は帰省の自粛を呼びかけ。宿泊療養施設も3棟目を建設。感染源である繁華街をピンポイントで指定して時短営業を要請するなど、エピセンターをしっかり抑える対応で乗り切ることに成功。年始は大変だったが、現在は封じ込めつつある。国にはとにかく休業補償を求めていて、国に相手にされなくても独自に緊急事態宣言を発令。地震、豪雨、コロナの三重苦に苦しめられる過酷な環境にありながらも、どうにか最善を尽くしている。
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仕事をしている知事に学ぶべし
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