武田大臣のインタビュー記事の発言で浮き彫りになる問題点
この会食が行われた2020年11月11日というのは、NTT澤田社長がドコモ完全子会社化を発表したことで始まった
TOB(株式公開買い付け)が実に約4兆2500億円という史上最大規模の買い付け総額で成立する11月17日のわずか6日前である。
武田総務大臣の担当分野である携帯料金の値下げ政策と非常に関係が深いTOBが成立する直前、当事者のNTT社長と同席して、何の話題にもあがらないのは不自然すぎる。
さらに、武田大臣は会食の翌月にあたる2020年12月21日に公開されたダイヤモンドオンラインのインタビュー記事にて、非常に興味深い発言をしている。以下、インタビュー内容を引用する。
(出典:
ダイヤモンドオンライン「武田総務相が初めて明かす、ドコモ「異次元値下げ」に至る舞台裏」)
”
馬渕(編集部注:インタビュアーである経済アナリスト・馬渕磨理子氏) 今まで動かなかった携帯料金の値下げを実現するに当たって、NTTの澤田純社長とのやり取りはありましたか。
武田 澤田さんだけはありません。他の事業者の方々とも私が着任したときにごあいさつしました。雑誌などで澤田さんの発言を見ると、国際戦略に重きを置いている人だという印象です。日本が5Gで後れを取った点を反省していて、6Gにおいて巻き返しを図る、そんな迫力を感じます。
馬渕 携帯各社の方々には就任時にごあいさつしたのですね。その後は、値下げに関してさまざまなやりとりをされましたか。
武田 いや、
自身が料金値下げに取り組む中では、携帯事業者の人にむしろ会うべきではないと思いました。私は方向性を示した後、料金引き下げに関することでは一切会っていません。というのは決断が鈍るからです。人間っていうのは、思い切ったことをするときにはね、
相手と会っちゃいかんのですよ。
情も芽生えるし、そこのところは「フェア」にやっています。”(太字は引用者)
インタビュー内容は以上である。武田大臣は「
NTT澤田社長とのやり取りは無い」「
自分が料金値下げに取り組む中、情が芽生えるので、携帯事業者と会うべきではない」という主旨の内容を明確に述べている。しかし、実際はこのインタビュー記事が公開された前月、
武田大臣はNTT澤田社長と会っていた。こうした事実を踏まえて、山添拓議員は武田大臣とNTT澤田社長の会食の問題点を浮き彫りにしていく。その質疑は以下の通り。(下記の動画リンクの2分15秒〜)
山添拓(2問目):
「NTTによるドコモの完全子会社化を進めるTOB、株式公開買い付けの終盤の時期にあたりますけれども、進捗状況は挨拶程度の中でも話題になったんじゃないですか?」
武田良太総務大臣:
「
あのー、本当に挨拶しかしていないような状況ですんで、全く個別の内容について他の方と喋ったことはありません。 (
青信号)」
山添拓(3問目):
「(直前の質問者の)白議員も紹介されていましたが、大臣は昨年12月のダイヤモンドオンラインのインタビューで「自身が料金値下げに取り組む中では携帯事業者の人にむしろ会うべきではないと思いました」と述べています。会っていたんじゃありませんか。」
武田良太総務大臣:
「
ダイヤモンド・・、週刊ダイヤモンドのインタビューにおいては料金引き下げの件について、ご挨拶に来られて以降、お会いしていないという主旨をお答えしたと記憶しております。(
赤信号) 」
山添拓(4問目):
「いや、その他の人についても「携帯料金引き下げに関することでは一切会っていません」と述べているんです。しかし、実は11月に会われていたんですね。」
武田良太総務大臣:
「
あの、値下げに関することでは会ってないって書いてるでしょう。(
赤信号)」
山添拓(5問目):
「いやだけど、「相手と会っちゃいかんのですよ」と、そう言われているんですよ。「情も芽生えるし、そこのところはフェアにやってます」と言ってるんですよ。フェアじゃないじゃないですか。」
武田良太総務大臣:
「
あのー、私が、その会にNTTの澤田さんを呼んで下さいだとか、えー、そうしたことがあるなら話は別ですけども、私が別の目的、つまりJR葛西名誉会長の席にお邪魔した際に複数人の中に現場に行った時に居られたということです。私が会いたくて会ったとか、来てもらったとか、そんなんではなくて居られた。複数人の中のお一人で居られたということです。(
赤信号)」
山添拓(6問目):
「いや、だから、たまたま居合わせたということなんでしょうけども、ご説明によればですね。しかし、(武田大臣自身がインタビューで)「会ってません」とおっしゃったんですよ。ここではね。携帯値下げを看板政策にする政権の総務大臣が値下げと一体のTOBの最中、渦中のNTT社長、NTTドコモ取締役と同席し、会食をすると。やっぱり、それ自体が疑念を招くと思われませんか?」
武田良太総務大臣:
「
あのー、我々政治家は様々な経済人の方々と交流を持ちながら政策を練っていかなくてはならないんですね。そうした機会の中に澤田さんが居られたということで国民から疑われるような話なんか全くするつもりもないし、してません。(
青信号)」
山添拓:
「澤田社長も先日、この委員会で疑念あるいは疑いと言われるような印象を与えたと述べられました。やはり、すでに疑念だらけだと思うんですね。」
質疑は以上である。
武田大臣の答弁は
大半が論点のすり替えであり、
赤信号とした。
3問目、4問目
【質問】携帯事業者と会ったか
↓ すり替え
【回答】携帯事業者と値下げに関して会ったか
5問目
【質問】NTT社長と会うこと自体の問題性
↓ すり替え
【回答】NTT社長を自ら呼んだか
これらの論点すり替えによる主張は、武田大臣自身のインタビュー記事の発言によって、ことごとく矛盾を指摘されるという皮肉な結果になっている。
また、2問目(会食時にTOBの話題になったか)と6問目(TOBの最中、利害関係者と会食すること自体が疑念を招くのでは)は質問と対応する内容が述べられており青信号とした。いずれも疑いを否定する内容を答弁しているが、事実かどうかは非常に疑わしい。
<文・図版作成/犬飼淳>