なぜ立花孝志が衆参補選に候補者を擁立するかと言えば、仮に当選できなかったとしても、例えば参院補選であれば、1票ごとに約80円の政党交付金が入ってくる計算になるからだ。
しかし、衆院選の北海道2区にしろ、参院選の長野県、広島県選挙区にしろ、N教党は300万円の供託金が没収されるのは確実で、2年前の参院選の時よりも票が取れなくなり、おそらく前回の半分も取れないと予測されている。仮に最大値ということで、前回とまったく同じだけの票を取れたとして計算してみよう。北海道2区では、札幌市北区と東区の参院選比例区の票を参考にしている。
北海道2区:6944票×45円=31万2480円
長野県:3万1137票×80円=249万0960円
広島県:2万6454票×80円=211万6320円
それぞれの供託金は300万円であることから、仮に2019年の参院選と同じくらいの票を取ったとしても、108万0240円の赤字になってしまう。実際はこの半分も票が取れない可能性が高く、200万円以上の赤字になることは確実だ。それでも900万円が丸々なくなってしまうわけではないので、少ない出費で党のアピールができるのであれば、そんなに悪くないという頭の中なのだろう。
しかし、そもそもN教党に、これ以上の知名度は必要なのだろうか。知名度だけであれば、「頭のイカれた政党」として既に十分な知名度を得ているはずで、これ以上の炎上に意味はない。最近は、これまでさんざん燃えてきたこともあって「燃えカス」状態であり、火をつけようにも火がつかないところまで追い込まれている。自称・選挙のプロは、我々凡人には想像のつかない「勝てる戦略」とやらがあるのだろう。
総務省の接待問題で揺れる国会は今、猛烈に解散風が吹き荒れようとしている。5月にも解散総選挙をやる方向で話が進み始めているといい、4月25日の衆参補選の結果を見るか見ないかのうちに、とっとと解散が決まってしまうかもしれない。7月には東京都議選があるが、その前に衆院選を終わらせておきたいという思惑もあるようだ。また、新型コロナウイルスによる混乱はまだまだ続きそうで、遅くなれば遅くなるほど自民党にとって不利になるという目測もあるようだ。
そうなると一気にピンチになるのが、我らが「NHK受信料を支払わない方法を教える党」である。このままだと、広島3区以外に300万円の供託金を払って立候補してくれる人が見つからず、自腹で11選挙区に立候補しようと思ったら、小選挙区と比例の重複で6600万円の供託金が必要になり、党の財布はバーストする。そうなった時には、再びN教信者たちから金を借りることになる。5億円の返済に見通しが立たないにもかかわらず、再び借金をするのである。N教党の未来は、けっして明るくない。
<取材・文/石渡智大>