生きづらさを救う「理解のある彼くん」は実在するのか? 専門家に聞いた

恋人を得れば心の病や生きづらさから救われる? 長年語られてきた都市伝説に専門家が答える

いつも唐突に登場する「理解のあるパートナー」

 うつなどの精神疾患、発達障害などにより日常生活がうまく送れず「生きづらさ」を感じていた人が、それを克服するまでの経験を出版したりSNSで発表する事例が増えている。そんな中、定期的に俎上にのるのが俗に言う「理解のある彼くん(または彼女)」問題である。  そこにありがちな「今は理解あるパートナーに恵まれたおかげで幸せに暮らしています」というオチが、同じ悩みを抱える人々の不評を買っている現象だ。  去る2月半ばにも、「理解のある彼くん」漫画が投稿され話題になったばかりである。  多くの人がそうしたストーリーに違和感や不快感をおぼえる要因についてはすでに多く考察されてきたが、実際に「理解のある彼くん(または彼女)」の存在が救済につながるのか? 専門家の見解を聞いた。  臨床心理学博士の黒川隆徳氏は精神医療の本場アメリカ・カリフォルニア州認定カウンセラーとして長年勤務した経験を持つ。他の心理セラピストのスーパービジョンや臨床指導においても高い評価を得ており、カップルカウンセリングの経験も豊富である。    「結論から言うと、精神疾患や発達障害による生きづらさと、パートナーの有無は直接関係がありません。恋愛なしでうつ病を克服する人も多いですし、逆にパートナー関係が心を病む要因となっている場合もあります」(黒川氏)

臨床心理学博士の黒川隆徳氏。アメリカで長年カウンセラーとして活動した経験も

 以下、問答形式で構成する。また、本稿ではメンタルの問題を「生きづらさ」と総称する。

恋愛関係はプラスになるが、病期によって及ぼす影響が異なる

――”生きづらさ”が語られる中で、唐突に登場する「理解のあるパートナー」はインターネットミームにもなり、揶揄の対象になっています。人々がそれに不快感をもよおす主な理由は、「病気と言っておきながら、ちゃっかり恋愛はしている」「自慢している」といったことのようです。実際に、パートナーの有無はメンタルヘルスにどのような影響をもたらすのでしょうか?  黒川:まず精神疾患の面からお話します。  良い恋愛関係はもちろんメンタルの回復においてプラスになりえますが、関係性を結んだ時期によって問題の質は大きく変わります。  精神疾患の克服には、自分自身と向き合う作業も必要です。幼少期を振り返り、親子関係が現在の人間関係にどのように再現されているかなどを知り、トライアンドエラーを繰り返して回復していく。  自分との関係性が改善すると、おのずと対人関係も良くなります。その段階で出会った相手であれば、良質な関係を結べる可能性はあります。
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心を病んでいても誰かと繋がること自体は可能
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