スペインの国民からすれば、王家のメンバーであるのであれば国民の前に道義的にも模範を示す意味でスペインの保健省で規定されているワクチンの順番を待つべきであった。
因みに、彼女二人がスペインでワクチンの接種を受けるとなると二人は50歳台ということでグループ3Bに属すことになる。彼女らの前にグループ5A(80歳以上)、グループ5B(70歳以上)、グループ5C(60歳以上)とあり、彼女らの順番が来るまでまだ最短でも2-3か月は待たなければならなかったであろう。それを飛び越えてアブダビで護衛まで連れてワクチン接種に出かけたのである。この行為にスペインの国民が憤慨するのは当然のことである。
電子紙『El Diario.es』の創設者で発行責任者でもあるナチョ・エスコラルは「共和制の擁立の動機づけが外部から起きているのではなく、王家のメンバー自身がそれを誘っている」とテレビ6チャンネルのインタビューの中で指摘した。
現状では共和制の擁立にすぐに結びつくような状況にはない。しかし、前国王そして二人の王女のスキャンダルと重なってしまい、特に年代の若い層では王家の存在に強い疑問を持つようになって来るということである。そして彼らが成長して中年層に達してスペイン政治の決定の中心を占めるようにになって来ると王家の存続への疑問が真剣に問われるようになる可能性は十分にある。即ち、それはフェリペ6世の治世中かあるいは長女レオノールが王位を就こうとする時であろう。
フェリペ6世のサルスエラ王宮は国王(53)も王妃(48)そして二人の王女はワクチン接種の順番を尊重すると表明して姉二人の行動とは距離を置く姿勢を維持している。
<文/白石和幸>