ところが肝心のワクチン接種のスピードは、国全体で当初の予定から大幅に遅れている。
スペイン政府は夏が終了した時点で70%の国民がワクチン接種を済ませると計画していた。それはおよそ3300万人ということになる。しかし、現状の接種スピードだと9月の時点では国民の僅か28%しか接種が終了していないことになると、スペイン紙『ABC』は
2月28日付の記事で報じている。更に同紙によると、国民の70%に到達するのは来年12月、100%に至るには2023年8月まで待たねばならない、と指摘している。
80歳以上の高齢者は3月末までに2回の接種を受ける計画になっているが、現状の接種スピードであれば、これも実現させるのは現段階では不可能である。
2月末の時点で2回目の接種を受けた人は僅かに120万人。人口比で見れば僅か2.6%でしかない。
当初の保健省の計画では80歳以上の高齢者の接種が終了した段階で、4月からは70歳から79歳の段階となり、次に60歳から69歳という段階に移るとしている。
しかし、80歳以上の高齢者への接種が既に大幅な遅れを見せている現状では70歳から79歳の4月からの接種というのも当然実現は無理ということになる。
同紙によると、現在までスペインが入手しているワクチンはファイザーが350万8245ダース、モデルナ19万2000ダース、アストラゼネカ80万8600ダースとなっている。但しアストラゼネカは55歳以上の年齢者には接種しないとスペイン保健省は決めている。これは誤った判断だと批判する声もあり、いずれ修正される可能性がある。
これから期待が持たれているのは1回の接種で済むヤンセン(ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン開発部門)である。しかも、保存温度も摂氏2度から8度の間ということで一般の冷蔵庫で保存できることになる。4月から入手が出来るようになると見込まれている。
現在までで接種のスピードが最も早い自治州はアストゥリア州で、人口比3.8%の接種が完了している。筆者が在住しているバレンシア州は2.0%とスピードの遅さは最後から2番目である。ということで筆者に順番が回って来るのはまだまだ遠い先のことである。
スペインの各自治州では接種する場所を広い会場にし、退職している看護師なども総動員して接種のスピードアップを図っているが、ワクチンが予定通り届かいのであるからスピードアップが出来ない状態にある。
2月は400万ドーズの入手が予定されていたが、各自治州が入手しているのはそれを大幅に下回っている。また3月は570ドーズの入手が予定されているが、果たしてそれが実現されるか疑問視されている。
スペイン国内においても2つの研究所で開発されているワクチンが一番の有望株であるが、それが接種できるようになるのは来年のことであろう。
<文/白石和幸>