お決まりのこの一文は再現されている
どうやらこのカレンダーは、北京にある北朝鮮の書籍など著作物などを代理販売している中国企業Aが顧客向けに制作したサービス品であることが分かった。
A社は、昨年の夏以降、北朝鮮書籍を輸入できておらず、当然ながら販売できずにいる。そのため、詫びと今年へのつなぎの意味があるのではないか、とAの顧客である前出の貿易会社代表は話す。
1月末、A社からカレンダー販売の案内が届く。その案内のサンプル画像の表紙下にはA社の社名が載っていたそうだ。しかし、どこかの顧客に突っ込まれたのか、製品版ではA社の名前は消されて表示なしになっていた。
「(北)朝鮮のカレンダーと案内しているのに発行元が中国企業名だったら変じゃないですか。それって朝鮮製ではなく中国製のカレンダーってことですよね?」(貿易会社代表)
どうやら絵画の作品名が表示されていないのも、国旗がないのも北朝鮮本国の使用許可が得られなかったからだとみられる。というのも、北朝鮮は、国旗や国章などを使用するときには、平壌のしかるべき機関の許可が必要で、厳格に管理されているからだ。
貿易会社代表は、カレンダーを作る許可はもらえて、暦情報などは反映させたけど、国旗や国名を載せる正式許可はもらえなかったのではないかと推測している。
今年の「北朝鮮カレンダー」は日本にも輸入できる!?
作品下に作品情報と金正日氏関連のエピソードが明記される過去の芸術品カレンダー
このカレンダーは、元々北京で作ったものなので、当然、発行国は北朝鮮ではない。つまり、北朝鮮風カレンダーであり、中国製と認識していいだろう。
とすると、日本政府が実施する「北朝鮮を原産国とするあらゆる商品の持ち込みを禁ずる」とした日本の独自制裁には抵触せず、12月に大同江ビールを無許可で輸入・転売した容疑で書類送検した男性への法的根拠となった外為法にも抵触しないと思われる。
しかし、このカレンダーは別の大きな問題を抱えている。レア度が高いのは間違いないが、著作権が限りなくアウトに近いのだ。日本の法人などが輸入・販売すると著作権法違反に問われかねない品物だ。
2月にこのカレンダーについて取り上げたNHKなどが、ロケット工業節へ焦点を当てて、出どころをあえて曖昧にしたのは、著作権がグレーであることが分かったからではないだろうか。
当初はA社の顧客15社ほどへのサービス品だったようだが、不評だったのか、多く印刷しすぎたのか、現在はオンラインで誰でも買うことができる。
中国では日本と比べてカレンダー需要が低いためか、小売向けECサイト最大手の淘宝網や卸売向けのアリババでも確認できないが、A社のWeChat(ウィーチャット)アカウントで販売されている。
北朝鮮で買える本家北朝鮮カレンダーと比べると2、3倍ほど高いが、それでも1コインで買えるくらいの価格で売られているので、意外と良心的な価格なのではないだろうか。
<取材・文・撮影/中野鷹>