ReyanさんとUさんの2人も同性カップルゆえに部屋探しに困った経験を持つ。こうした体験があるからこそ、LGBTQの力になりたいとの想いから「KATATI不動産」の立ち上げに至った。
「KATATI不動産」は、LGBTQの部屋探しをどのように解決していくのだろうか。Uさんはこう語る。
「スタッフは全員、LGBTQ当事者です。そのためお客様は安心してご自身のことを私たちにお話いただけます。また当事者だからこそお客様の心情を理解し、親身になってお部屋探しのサポートができるのが強みです。
ご面談は完全予約制で、お会いする場所はお客様がお好きなカフェでも、オンラインでも対応しており、プライバシーに配慮しています。不動産業者の店舗で話すのと違い、よりプライベートな環境でお話できる環境を整えています」
さらに、「KATATI不動産」で部屋探しをした人たちとスタッフが当事者のコミュニティを構築するサービスも提供。具体的には、定期的な食事会やオフ会を行い、交流の場を設ける。
「かつてLGBTQの当事者が繋がりを持つ場所が見つからず、居場所のなさを感じたことがあります。そこで私は自分と同じような悩みを持つ人を集め、LGBTQの当事者100人ほどが集まるコミュニティを運営していました。こうしたコミュニティをKATATI不動産でも取り入れようと思いました」(Reyanさん)
筆者がインタビューを行った2月末時点では、対応地域は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県。Uさんは、「今後は地方の政令指定都市を中心にサービスを拡充したいです」と意気込みを話してくれた。
管理会社をターゲットに、LGBTQの理解を深める講演会を企画
ただここで疑問が残る。前節で書いたように、LGBTQの部屋探しのハードルがあるのは、不動産業界の認知が不十分であることが大きい。ここをクリアしない限り、LGBTQの入居に前向きにはなりにくい。
「LGBTQとはどんな人なのかについて、地道に理解を求めていくつもりです。今後は、管理会社様を対象とした講演会を企画しています」(Reyanさん)
管理会社に理解を求めようとするには理由がある。入居希望者からの申し込みに対して入居の可否を判断するのは物件所有者だが、現場でLGBTQ当事者と接するのは物件の管理会社、もしくはその関連会社の担当者であることが多いためだ。つまり、管理会社の担当者がLGBTQを理解していれば所有者に案内しやすくなり、入居できる可能性が高まるわけだ。
賃貸物件の所有者は専業大家ばかりではない。社長や管理職など地位がある人や、高年収の会社員が所有しているケースもあり、入居者対応のほとんどを管理会社に委託することが多い。こうした現状を考えれば、管理会社へLGBTQに対する理解を深めてもらうメリットは大きい。