会見で指名される記者たちも、小池知事に対する厳しい質問は皆無
千代田区長選最終日の1月30日。飯田橋駅西口前で小池知事は樋口たかあき前都議(都民ファースト)の応援演説に立ち、「密」状態を自ら作り出した。しかし、会見では「密」状態を否定する答弁をした
小池知事の「密」状態街宣については、2月6日付の日刊ゲンダイ
「都は無自覚感染8万人超の恐れ 小池知事“密”つくるも平然」や、2月9日付のダイヤモンドオンライン
「コロナ入院格差、自宅死亡を引き起こした都庁『入院調整』の機能不全」などの記事でも、証拠写真つきで紹介されている。さらに丸山知事発言(批判)が加わっても、小池知事は非を認めようとしないのだ。
そして筆者と違って会見で知事に指名される都庁記者クラブの記者たちも、知事の虚偽答弁を厳しく問い質そうとしない。丸山知事は、こうしたメデイアのノーチェック状態の背景に“五輪タブー”があるのではないかとも指摘していた。
「オリンピックというイベントはメデイアにとっては多分やりたい事業だと思うが、それが『メデイアとして本来やるべき仕事がぶれていないのかどうか』を私は疑問に思っています。普通はメデイアのチェックがきく。私がこんなこと(『密』状態での街宣)をやったら、袋叩きになると思いますよ。でも(小池知事は)大きなイベントの主要主催者だから、みなさん(メディア)遠慮されているのかな、としか私は思えない」(2月10日の会見より)
「五輪開催自治体トップだから、小池知事はメディアチェックを免れている」という見立てだが、この丸山知事発言を受けて筆者は8か月ぶりに「都知事会見指名回数順位(“小池知事お気に入り記者”ランキング)」を作成することにした。小池知事のウソが罷り通る、都庁会見の異常な実態を再び可視化しようとしたのだ。
●表1 小池知事会見指名回数順位(お気に入り記者ランキング)(20年6月19日~2021年2月19日)
1 民放 O記者 31回
2 民放 Y記者 24回
3 民放 N記者 16回
3 NHK N記者 16回
3 ブロック紙 k記者 16回
3 ブロック紙 O記者 16回
最下位 フリー 横田一 0回
●表2 著書『仮面』で紹介した「都知事会見指名回数順位=“小池知事お気に入り記者”ランキング」
1 民放 O記者 15回
2 民放 N記者 12回
3 全国紙 K記者 11回
3 独立放送局 S記者 11回
4 全国紙 N記者 10回
4 NHK N記者 10回
最下位 フリー 横田一 0回
2020年8月出版の自著
『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』でも都のホームページの知事会見録から質問者を拾い上げて集計したランキング表を紹介したが、前回(表2)は「2019年12月27日~2020年6月12日」の集計だった。そこで今回の表1は「6月19日から2月19日」までを調査期間にした。一度も指名されない筆者に対して、“お気に入り記者”たちは10回以上指名されている。いずれも上位には民放テレビ局の女性記者が並んだ。
メディアは“五輪タブー”の呪縛から解き放たれ、チェック機能を取り戻せるか
会見で“お気に入り記者”ばかりを指名する小池知事
『女帝』の著者・石井妙子氏は、2020年6月17日付の「ダイヤモンドオンライン」で、都知事会見について次のように語っていた。
「彼女(小池知事)のくだらない冗談に、前の方に座っている民放キー局の女性記者たちが、大げさに受けたり、うんうん、うんうんと必死でうなずいて見せている。私は秘かに『うなずき娘』と呼んでいるのですが(笑)、記者たちが権力者に迎合しすぎています」
小池知事に迎合的な記者が優先指名される異常事態は、1年以上も前から現在まで続いている。
「都に対する社会的チェックがまったくきいていない」という丸山知事の指摘は的確で、“五輪タブー”に縛られたメディアは猛反省すべきだ。
こうしたメディアの機能不全状態こそ、「カイロ大学首席卒業」という疑わしい経歴でキャスターから国会議員を経て都知事となった小池知事が、今でも虚偽発言を押し通せる状況を許しているといえる。これも、「仮面」をかぶった小池知事の実態(素顔)をメディアが伝えない“職務怠慢”の産物ではないか。
これまで小池知事を“巨人化”させたメディアが、丸山知事発言を機に“五輪タブー”の呪縛から解き放たれ、チェック機能を取り戻すのかが注目される。
<文・写真/横田一>