結党当時の自民党では、大半の議員が親族に国会議員のいない「たたき上げ」でした。初代総裁の鳩山一郎が二世議員であったものの、第二代の石橋湛山、第三代の岸信介、第四代の池田勇人は、政治家の家系ではありません。議員構成は、政党活動を積み重ねて議員となった党人派と、官僚から転身して議員となった官僚派に大きく分かれていました。
しかし、現在の自民党では親族に国会議員のいる「二世議員」が主流です。菅内閣での自民党所属大臣20人のうち12人が「二世議員」です。この傾向は過去も同じで、2012年12月に成立した第二次安倍内閣においても、安倍首相を含む18人の自民党所属大臣のうち11人が「二世議員」でした。多少の「二世議員」がいても、多数が「二世議員」で占められている政党は他にありません。
「二世議員」であっても、選挙地盤を継がずに議員となった場合は、本人の力と考えられます。国会議員になる際、もっとも重要な財産は集票のための組織、すなわち後援会です。それを継いでいなければ、一般的には「親族に国会議員がいたというだけ」の国会議員となります。
一方、多くの自民党「二世議員」は、親族の培った選挙地盤を引き継いで国会議員になっており、本人の力とはみなし難いのです。本人の資質や能力、経験、努力よりも、担ぎ上げる「御輿」として相応しいから、選挙地盤を引き継ぎ、国会議員になったと考えられます。
もし、彼ら・彼女ら「二世議員」が、一般の人と同じく国会議員の家に生まれなかったら、はたして国会議員になっていたでしょうか。若くして当選回数を重ねて、大臣や党幹部になっていたでしょうか。安倍晋三さん、甘利明さん、石原伸晃さん、小渕優子さん、竹下亘さん、平井卓也さんたちは、今ごろ何をされていたでしょうか。
たまたま国会議員の家に生まれるというコネがなければ、資質等の面から国会議員になれなかったのであれば、それは「ドラ息子」です。もう一つの人生を誰も見ることはできませんから、誰が「ドラ息子」に当たるのか、不祥事でその資質等が発覚しない限り、分かりません。それでも、国会議員の親族が国会議員になる率は、異常に高いといえますので、そこには一般の人々と同じくらい、国会議員として不適正な人がいると考えられます。
要するに、自民党には、かなりの人数の「ドラ息子」が紛れ込んでいる上に、菅首相のように「たたき上げ」も「ドラ息子」を優遇しているならば、コネを大切にする政党となります。「ドラ息子」の「ドラ息子」による「ドラ息子」のための自民党です。
ドラ息子トランスフォーメーションか、デモクラシートランスフォーメーションか
菅首相の「ドラ息子トランスフォーメーション」を推進したい人は、来たる総選挙で与党に投票しましょう。能力はない、努力もしたくない、でも美味しい思いをしたい、自慢できるのは有力者へのコネだけという人にとっては、天国のような社会になるでしょう。
他方、コネが横行する社会にうんざりする人は、民主主義を発展させる「DX=デモクラシートランスフォーメーション」の担い手になりましょう。本を読み、SNSで異議を唱え、家族や友人と政治について対話し、関心のあるテーマのデモに参加し、政治家に意見を送り、投票に行く。これが「デモクラシートランスフォーメーション」です。
「ハーバービジネスオンライン」などのメディアで、気になった論考を友人にシェアするのも、有効な「デモクラシートランスフォーメーション」です。気に入った記事があれば、シェアして「デモクラシートランスフォーメーション」を推進しましょう。
<文/田中信一郎>