『ある人質 生還までの398日』。ISに囚われたカメラマンと身代金のために奔走する家族の物語

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(c)TOOLBOX FILM / FILM I VÄST / CINENIC FILM / HUMMELFILM 2019

 2月19日より、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー合作映画『ある人質 生還までの398日』が劇場公開されている。  本作は、2013年5月から翌2014年6月まで、398日間にわたってシリアで過激派組織IS(イスラム国)の人質となり、奇跡的に生還を果たしたデンマーク人の写真家ダニエル・リューの実話の映画化作品だ。監督は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2010)のニールス・アルデン・オプレブが務めている。  タイトルや設定からして徹底して重く苦しい内容と思われるかもしれないが、実際は先が気になるエンターテインメント性も十分あり、同時に「家族の物語」であるからこその親しみやすさも併せ持った、優れた作品であった。その具体的な魅力を紹介していこう。

突如として拉致監禁される恐怖

 ダニエルはデンマーク体操チームのメンバーだったが、負傷して選手生命を絶たれたため、かねてからの夢だった写真家になることを決意。戦争の中の日常を記録し世界に伝えることこそ自分の使命だと確信し、その撮影先としてシリアを選ぶ。だが、トルコとの国境付近の町で、ダニエルは突如として男たちに拉致されてしまう。
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 この拉致までの過程が、「あっという間」ということがまず恐ろしい。ダニエルは家族に戦闘地域へは行かないと約束し、実際にも行かなかったのだが、それでも問答無用で車に乗せられてしまう。同行のガイドが自由シリア軍の許可証を持っていたのだが、それも全く役には立たなかった。  実は、シリアでは情勢が刻々と変化しており、イスラム過激派の新興勢力が手を組んで一大組織を設立しようとしていたのだ。その資金調達のための誘拐ビジネスも活発化し、ダニエルのような駆け出しの若者だけでだけなく、ベテランのジャーナリストも拘束されるようになっていたという。  言ってしまえば、ダニエルは最悪のタイミングでその場所に訪れてしまった、とてつもなく運の悪い青年だ。少しでも情勢が違えば、彼はこの後の生き地獄を体験せずに済んだだろう。

身代金のために奔走する家族の物語

 ダニエルの家族は、彼が予定の便で帰国しなかったために人質救出の専門家と連絡を取る。専門家は誘拐犯を突き止めるが、犯人から要求された身代金は70万ドルという大金だった。テロリストと交渉しない方針のデンマーク政府からは支援を期待できないため、家族が全額を用意するしかない。だが、家を担保にするなどしても25万ドルしか用意できず、家族はやむにやまれずその金額を提示すると、犯人側は激怒し身代金を一気に200万ユーロに引き上げてしまう。  家族にとって、ダニエルの生還が最優先事項であることは言うまでもない。だが、身代金を政府に援助してもらえない上に、家を担保にしても提示された金額に届かず、さらに犯人を怒らせ身代金を引き上げられてしまうという理不尽に見舞われる。それでも家族はダニエルのために、募金活動などに奔走していく。しかも「マスコミに知られない」「違法にならない」ことも達成しなければならない。
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 愛する息子の命は、大金との天秤にかけるようなものではない。だが、現実問題として1ユーロでも多くの金の集めなければならない家族には、多くの障害が立ちはだかる。もちろん、その間も息子は拷問され続けており、命を落とす可能性も十分にあることも、家族は理解している。その過程は想像を絶するほどに苦しく辛くもあるが、息子を救うというただ1つの目的のためにあらゆる手を尽くし状況を打開していく様は、同じように家族を大切に思う方の心に響くことだろう。
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「エベレストに登るかのよう」な過酷なエピソード
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