企業にとって都合の良すぎるシフト制労働者の働かせ方は、「シフト制労働は家計補助労働」であるという家計補助労働論によって容認されてきた。すなわち、パート・アルバイトなどのシフト制労働は、夫もしくは父親である男性正社員の収入を補助するために子どももしくは妻が行っている「家計補助労働」であり、収入が減っても労働者生活に大きな影響を与えないと考えられてきたのである。
しかしこうした家計補助労働論は、ますます現実と合致しないようになっている。シフト制労働による収入がなければ普通の暮らしが送れないという労働者世帯が増えているのである。
例えば報道で大きく取り上げられた株式会社一風堂に休業手当を求めているアルバイト男性は、20代後半の単身であり、そのアルバイト収入で自らの生活を支えている。また、冒頭で取り上げた株式会社フジオフードシステムの田中さんには正社員の夫がいるものの、田中さんのアルバイト収入がなければ労働者生活に大きな困難をもたらすほどその家計における位置づけは高い。シフト制労働が労働者生活において非常に大きな役割を果たすようになっているのである。
こうした労働者のシフトと給与を大幅に減らしてしまえば、労働者生活に大きな困難をもたらすことは明らかであり、柔軟なコスト調整手段としてのシフト制という企業側の位置づけと、労働者生活におけるシフト制労働の位置づけとの矛盾は非常に大きくなっている。
シフト制労働者は飲食産業で働く労働者の約8割を占め、シフト制労働者無しに飲食産業は成り立たない。田中さんの事例からもうかがえるが、企業もシフト制労働者に大きく支えられているのである。シフト制労働者に大きく支えられながら、そのシフト制労働者の生活への責任を一切果たそうとしない大企業を放置していてはならないだろう。