感染対策の「手段」と「目的」が逆転。鼻出しマスクやマウスガードを正当化してしまう「自己目的化」とは

マウスガード

ドヤ顔をしても感染防止には意味がない。USSIE / PIXTA(ピクスタ)

 長期的にコロナ対策を強いられて、感染対策の自己目的化が起きている。街を歩くと、マスクを着けることが目的になっていて、本来の「感染対策」が目的になっていない人が増えてきているように思えるのだ。

効果薄な「鼻出しマスク」や「マウスガード」

 たとえば、最近は街中でマスクを着けているが、鼻だけ出している人を見かける。  大学入学共通テストでマスクから鼻を出した状態で受験に臨み、何度も指摘されたにも関わらず「メガネが曇るから」という理由でマスクをちゃんと着用しなかったために失格となったケースもあった。自民党の二階俊博幹事長が、会見時にマスクから鼻を出していたことで批判を受けたことも話題になっている。    また、私の周りではマウスガードに関して一悶着あった。テレビでタレントさんが着けているプラスチック製のマスク「マウスガード」は、話すにも便利だし息苦しさがないので、エンターテイメント業界飲食店の人も着けていることがある。  しかし、このマスクには感染防止対策効果はほとんどないことがわかっている。  スーパーコンピューター富岳のシミュレーションによると、不織布マスクにおいて飛沫の吐き出す量や吸い込む量は20~30%だが、マウスガードでは吐き出しの飛沫量は90%で、吸い込みにおいてはほとんど効果がない。  つまり、ほとんど感染対策にはなっていないのだ。日本医師会中川俊男会長も、会見でマウスガードよりもマスクを推奨していた。

いつのまにか手段と目的が逆転

 さて、読者の皆さんは今、感染対策の手段と目的をわけて行動できているだろうか? マスクを着けるときやマスクを買うときに、「マスクを着ける」ことが目的なのか、「感染対策をする」ことが目的なのか意識できているだろうか?  私たちは長期に続く感染対策意識のせいで、いつのまにか手段が目的となり、手段を達成するための妥協点を見つけるようになってしまう。  ある目的を達成するための手段のはずが、手段が目的化してしまうことを「自己目的化」と呼ぶ。鼻出しマスクをしている人は、特にこの傾向が強いだろう。  「感染対策」という本来の目的よりも、「マスクを着ける」という手段がいつの間にか目的になってしまい、マスクを着けていれば目的を守れているという意識になってしまうのだ。  そういう人ほど、「マスクを着けているんだから、いいじゃないか」という言い訳をしているが、実際はそういう問題ではない。
次のページ 
異例の状況に慣れず、当初の目的意識を保ち続けることが重要
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会