「くらしのマーケット」がある登録業者を突然掲載停止に。掲載サイトと登録業者は本当に「平等」か?

記者会見 高田純次のCMでおなじみのインターネット上の巨大デジタルプラットフォーム「くらしのマーケット」。単身者の引っ越し、遺品整理、不用品回収、エアコンクリーニングなど多岐にわたる業務分野の便利屋と消費者をつなぐサイトである。  サイトには便利屋業者の顔写真やプロフィール、そしてサービス利用料が掲載され、利用者は気に入った便利屋業者にサービスの利用を申し込む。役務提供後、便利屋業者はマッチング料として、売上げの2割を「くらしのマーケット」を運営する「みんなのマーケット株式会社」に支払うというシステムだ。同種のマッチングサービスは他にも存在するが、群を抜いて集客力を持っているというくらしのマーケット。業界トップシェアを誇り、業者は同サイトにつながっていれば生活できるという評判もある。  そんな業界ガリバーのみんなのマーケット社が今年1月19日、登録業者2名からツイッターの「みかじめ料投稿」をきっかけとしたサイト利用停止は不当であるとして、同サイトの利用地位の確認を求めて訴えられた。原告は、同サイトを通じてハウスクリーニングなどの生活関連サービスを提供していた便利屋の宮南洋さんと永井邦明さん。以下、1月29日に開かれた記者会見に基づいて事実の経過を紹介したい。

ツイートがきっかけで一方的に掲載停止

 宮南さんは2019年6月12日にくらしのマーケットに業者登録し、同月からサイトを通じて仕事を受注していた。サイト内でランキング1位になるほど順調に売り上げを伸ばし、コンサルタントと呼ばれる担当者からも「どんどん売り上げを伸ばしていきましょう」と言われていたという。宮南さんはより多くの引っ越し業務をこなすために新車のトラックを購入。ところが、2020年5月14日の以下の宮南さんのツイートで事態が一変する。 「当方は、くらしのマーケットさんに毎月、10万円~20万円の<みかじめ料>を払っています。いい面もありますが、事実上の下請け業者になっている側面もあり、この点は強く問題視しています。仲介屋さんに依存せず、自力でお仕事を取っている同業者のみなさんを尊敬しています」  同業者に向けてツイートしたものであり、一方的にくらしのマーケットを誹謗中傷する文面でもない。ところが、このツイートを見た同社から宮南さんに電話が入り、ツイートの削除を要請。宮南さんは迅速にツイートを削除し、くらしのマーケット社と良好な関係の構築をしたいと対応した。  この時点で宮南さんは元の投稿を削除しても、リプライ投稿された場合には、元の投稿が引用表示されてしまうことを知らなかった。しかし、再度投稿が残っているとの指摘を受け、リプライ等もすべて一つずつ削除した。  にもかかわらず、同月19日に同社は「出店の継続について審議をするので掲載停止にする」とのメールを送信し、以降宮南さんの個別ページの掲載を停止した。宮南さんはその後審議結果や進捗状況について電話やメールで問い合わせているが、電話に対する応答は一切なく、「審議の状況や停止の理由には答えられない」という趣旨のメールが届いたのみ。8月の再度の問い合わせにも「よくある質問」のURLが送られて来たのみで、それ以上の説明は何もなく、仕事を干されたまま現在に至っている。  一方、一連のやり取りを宮南さんから聞いた永井さんは、5月21日、強い憤りを覚え「こぎれいなオフィスで、汗もかかず泥にもぬれず、頭も下げずに羨ましい」などと同社を揶揄するツイートを投稿。そして翌日、宮南さんと同じく審議対象になる旨の通知が来ると共に個別ページの情報の掲載が停止され、6月3日「社内協議の結果、退店の決定をした」という通知が来て一方的に契約は解除された。  一連の事実についてプレカリアートユニオンの清水直子執行委員長は、「くらしのマーケットはマッチングサービスであるが、実質的には支配従属させる関係で登録業者を働かせている。そうした状況の中で一方的に情報掲載が停止され、仕事ができない状況に陥ってしまうのは極めて不当」とし、「この裁判をきっかけにUber Eatsなどデジタルプラットフォームを通じたサービス提供にあたって弱い立場で働かざるを得ない人もいる現状を知って欲しい」とコメントした。

独占禁止法違反ではないか

 訴訟代理人である川上資人弁護士は「原告と被告の間にはサイトの利用規約を根拠とした利用契約が成立し、被告は引っ越し作業などの役務提供者である原告にくらしのマーケットのサイトを利用させる債務を負っている」とした上で、「被告が合理的な理由なしに一方的にサービスを停止したことは独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる」とし、理由を以下のように述べた。  公正取引委員会が令和元年10月に公表した「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」によれば、デジタルプラットフォームには、「役務提供者を含む利用者がプラットフォームに対する依存度を高めていく」という特徴が認められる上に、利用事業者や消費者が集中しやすく、有力な地位にある運営事業者は、多くの取引先に対して独占禁止法上の優越的な地位にあると認められる蓋然性が高いという。  そして、この報告書の内容に即して本件を考えると、常に注文に応えられるような体制を整えておかなければならないことなどによって、登録業者はくらしのマーケットに対する依存度が高まるような仕組みになっており、実際、原告が同プラットフォームに依存して生計を立てざるを得なかった状況を鑑みると、被告は原告に対して独占禁止法上の優越的な地位にあったと言えるという。  さらに、宮南さん、永井さんに対してツイッターでの投稿を理由に一方的にプラットフォームの利用を停止した被告の行為は優越的地位の濫用にあたるというのだ。  加えて、川上弁護士は昨年6月に提出された「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」についても指摘。この法案の省令案は楽天、Yahoo!、Amazonなど巨大オンラインモールを対象にしているが、今回問題となっている役務提供型のくらしのマーケットやUber Eatsは対象になっていないという。なぜ、役務提供型のプラットフォームを除外してしまうのか、その点に合理性はないのではないかと語った。  また、仮に独占禁止法上の優越的な地位にあたらないとしても、従来の判例法理によれば、取引関係を継続しがたいようなやむを得ない事由がない限り継続的契約の解消はできないとされており、今回はその場合に当たるとした。
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「事業者と対等」とは裏腹の実態
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