没後一周年、女優・伊藤清美が語る松田政男の肖像

松田政男と埴谷雄高

松田政男

『性獣のいけにえ』の現場での1枚。左が松田政男、右が伊藤清美

 昨年3月17日、映画評論家として知られる松田政男が死去した。第二次『映画批評』誌の創刊や、日活が鈴木清順監督を解雇したことによる「鈴木清順問題共闘会議」の結成といった活動のほか、管理社会やネオリベラリズムに対する批判としての射程を持つ「風景論」を著書『風景の死滅』などで展開した論客としても知られている。  また、1950年代に日本共産党の活動家として出発し、のち馘首され、アナキズムに接近。東京行動戦線を結成したり、『世界革命運動情報』を創刊したりし、自身を「失業革命家」と規定していた。彼に影響を与えた人物として、『死霊』などで知られる作家・埴谷雄高がいるが、今回語るのはその一場面だ。  語るのは女優・伊藤清美。彼女、松田、埴谷らが織りなす光景を、今振り返る。

松田政男との出会い

 伊藤と松田が出会ったのは1984年のこと。きっかけを伊藤はこのように語る。 「麿赤兒(まろあかじ)さんが監督をした映画『性獣のいけにえ』の現場で一緒になって。それ以前に(演劇集団の)『発見の会』で会った時も見たことはあるし、存在は当然知っていたけど、移動の車のなかで、隣同士になったときに話をしたのが最初。  『松田さんですよね』と声をかけたら、『最近映画に出てる伊藤清美ちゃんだよね』と言われて会話をして。当時のわたしは、“何も考えてない女の子”という感じだったんだけど、『(思想家の)吉本(隆明)さんにあったりすることはあるんですか?』と松田さんに尋ねたら、『会わないわけでもないよ』と言われて。そんな会話をきっかけに、それ以降、映画や芝居を観に行くというような形で関わりが実体化して」
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埴谷邸という「充実」した空間
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