権力に擦り寄り、スクープを取れなくなった大手新聞。記者クラブの大罪 <編集者・元木昌彦氏>

週刊誌が死んでもいいのか!

―― 他のメディアがスクープをとるためにはどうすればいいでしょうか。 元木: それはあまり期待できないと思います。新聞はもともと、事件化しない噂の段階から追及するということはやりません。また『週刊文春』以外の週刊誌が再びスクープに取り組むことはないでしょう。『週刊現代』や『週刊ポスト』の編集長にスクープ志向の人がついたとしても、スクープをやらなくなってからだいぶ時間がたっていますから、編集者や記者にスクープをとるためのノウハウがなくなっているので、『週刊文春』のような真似はできません。会社も費用対効果を考えて、スクープをとる体制を復活させるとは思えません。  『週刊文春』にしても、あれほどスクープを放っているにもかかわらず部数が減ってきています。彼らがどこまでスクープを続けることができるのか、正直なところ不安です。もちろん週刊誌がなくなることはありえないと思いますが、今以上に力を失っていくことは間違いありません。  これは非常に深刻な問題です。先ほど述べたように、『噂の真相』がなくなったことで、彼らであれば掲載していたような情報が行き場を失い、表に出てこなくなってしまいました。週刊誌が力を失っていけば、同じようなことが起こってしまいます。「週刊誌などなくてもいい」と思う人は、もし『週刊文春』がなければどうなっていたか想像してみてください。『週刊文春』がなければ甘利明の口利きと現金授受問題が明らかになることもなかったし、黒川弘務東京高検検事長(当時)が賭け麻雀で辞任することもなかったでしょう。芸能界で言うなら、ジャニーズやAKBのスキャンダルが明るみに出ることもなく、渡部建の不倫が表沙汰になることもなかったということです。  週刊誌の存在意義は、新聞やテレビが報じられないことを報じることです。週刊誌があることによって、新聞、テレビとの間でチェックアンドバランスが働くのです。週刊誌の役割は決して小さくありません。それゆえ、私はこれからも「週刊誌が死んでもいいのか!」と訴えていきたいと思います。 (1月4日、聞き手・構成 中村友哉) もときまさひこ● 1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義している。著書に、『編集者の教室』(徳間書店)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)など。 <記事提供/月刊日本2020年2月号
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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