その理由は3つ。
一つは、
設置期限延長に関わる法律と業界ルールのダブルスタンダード。
コロナ禍に際して法律では1年間の設置期限延長の措置を取ったが、パチンコ業界内ではそれよりも短い期間での撤去を促している。
ここには警察行政とパチンコ業界との複雑な関係が見え隠れするが、とにかく業界としては、全国のパチンコ店に業界内ルールを順守してもらうための誓約書の提出を求め、全国99%以上のパチンコ店がこの誓約書を提出している。
法律を守れば良いのか、業界ルール(誓約書)を守るべきか。この設置期限のダブルスタンダードが「沖ドキ」問題のベースになっている。
次の一つは、
コロナ禍による経営難の深刻化である。
本来右肩下がりの市場環境であったことに加えて、政府の要請に対する協力休業や4月の1回目の緊急事態宣言時にメディアの槍玉にあがった影響を拭いきれず、集客もままならず売上が大幅にダウンしたことに加えて、6号機(新規則パチスロ機)の不振や高射幸性遊技機撤去による設備投資が嵩み、企業の大小を問わずパチンコ店の経営は火の車である。
業界ルールを守りたくても、守れない実情。法律を犯している訳では無い。2回目の緊急事態宣言が発布された今、収益の中心となる「沖ドキ」の撤去には応じられない。そう判断したパチンコ店が多いということであろう。
最後の一つは、
「沖ドキ」が高射幸性遊技機ではないということ。
このことについてはは長年のパチスロファンの中でも驚く人がいるのだが、高い連チャン性能を誇る「沖ドキ」は、
業界が定めた高射幸性遊技機リストには含まれていないのだ。業界関係者に言わせれば、「究極の爆発力は
抑制された連チャン性能」ということらしい。
とにかく、政府のギャンブル等依存症対策の一環として、行政側から強く撤去を求められた高射幸性遊技機とは違うということが、「沖ドキ」の撤去に応じないパチンコ店の「言い訳」になっているのだ。
「高射幸性遊技機については、社会的な要求もあり撤去に応じざるを得ない。しかしそれ以外の遊技機に関しては、無理矢理撤去期限を早める必要はないのではないか。法律が定める期限を守れば問題ない」
関東某ホール経営幹部の言葉だ。
パチンコ業界の「沖ドキ」問題に関して、門外漢である筆者が「どちらが正しい」とは言い難い。業界内の事情がありルールが定まった経緯もある。コロナ禍におけるパチンコ店の経営事情もある。そもそも法律を犯していないという大前提がある。
しかしこのような業界の事情を分からないファンの立場からすればたまったものではない。
「沖ドキ」での遊技を望むユーザーは、「沖ドキ」が設置されているパチンコ店をわざわざ探していくだろう。
彼らは「沖ドキ」の撤去に応じていないパチンコ店からすれば、
店の固定客にはなりにくい流動客である。コロナ禍の中でも来店してくれる常連客とは違う還元対象でない彼らは、
悪く言えばカモであり、良く言ったとしても
粗利確保のための主客である。
「沖ドキ」を外した店からは客が消える。
「沖ドキ」を求めて店を変えた客の懐は痛む。
「沖ドキ」の撤去に応じなかった店は業界内の信頼を失う。
近江商人もびっくりの「
三方悪し」の構図が出来上がる。少なくともこの構図が、不振に喘ぐパチンコ業界の未来を改善させるとはとうてい思えないのだが……。
<取材・文/安達夕>