再燃する安倍前首相の「桜を見る会」買収疑惑。下関市長選や次期総選挙への影響も

安倍前首相は「総選挙での圧勝」を理由に疑惑を否定

「総選挙で圧勝」を理由に疑惑を否定する安倍前首相

「総選挙で圧勝」を理由に疑惑を否定する安倍前首相

 選挙で汗をかく地元の有権者への利益供与(買収)に該当し、公職選挙法違反であることは明らかだ。翌12月25日の議院運営委員会で宮本徹衆院議員(共産党)が「どうみても利益供与だ」と追及したのはこのためだが、これに対して安倍前首相は、総選挙での「圧倒的な勝利」を理由に疑惑を否定したのだ。 「私は、何か利益を供与して当選しなければならない立場ではまったくない。自分の選挙のことはまったく考えないという状況にならなければ、自民党総裁にはなれない。私も今まで9回選挙を戦ってきたが、毎回地元の皆様が大変頑張っていただいた結果、常に圧倒的な勝利を与えていただいている。利益を供与して票を集めることはつゆも考えていない」  本人がまったく考えていなくても、「桜を見る会」招待(利益供与)された地元支援者が選挙で汗をかいて票集めで恩返しする可能性は十分にある。そもそも公選法が有権者への利益供与を禁じているのは、候補者同士の論戦ではなく利益供与(買収)合戦になるのを防ぐためだ。圧勝で公選法違反容疑が晴れると考えること自体、法の主旨を理解していないとしか言いようがない。

地元支援者たちは、下関市長選での安倍派・林派の争いでも汗をかいていた

地元で「桜を見る会」疑惑を追及している急先鋒、田辺よし子・前下関市議

地元で「桜を見る会」疑惑を追及している急先鋒、田辺よし子・前下関市議

 しかも「山口4区」で約9割の有権者を占める下関市の市長選に目を向けると、安倍前首相のデタラメさをより実感できる。地元の支援者たちは、総選挙だけでなく、山口4区をさらに盤石にする「下関市長選」でも汗をかいていたのだ。  このことについても先の関連記事で紹介したが、安倍前首相の地元支援者は、同じ自民党ながらライバル関係にある林芳正・元農水大臣の支援者と熾烈な選挙戦を繰り返していた。 江島潔市長(1995~2009年)= 安倍派 中尾昭友市長(2009~2017年)= 林派 前田晋太郎市長(2017年~現在)= 安倍派  安倍前首相にとって天下分け目の決戦となったのが、元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎市長が誕生した2017年3月の下関市長選だ。  神戸製鋼所など安倍系企業が美味しい事業を受注するなど、不人気だった安倍派江島市政が終わり、林派中尾市政が2期8年間続いた。しかし、2014年から2019年にかけて「桜を見る会」の参加者と予算が増加する中、8年ぶりに林派から安倍派が市長ポストを奪還したのだ。  その結果、安倍前首相が圧勝してきた山口4区がより盤石になったのは言うまでもないが、先の「表1 桜を見る会と下関市長選」と重ね合わせると、安倍前首相の公選法違反容疑がより濃厚になる。 「◎印」の2017年の下関市長選に勝利するために「桜を見る会」で地元支援者に利益供与、「〇」印の2014年から2016年は市長選でフル稼働してもらうための供応(事前買収)で、「◎」印と「●」印の2017年から2019年は安倍派市長誕生への論功行賞的な供応(事後買収)かのように見えてくる。
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3月の下関市長選、次期総選挙に注目が集まる
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