2020年12月8日の第7回有識者会議での座長コメント。ここに書かれた「JR東海の現時点での想定であれば」との前提で「全量戻しは可能」と結論づけるかのような文言には、取材をしていた記者の多くから批判の声が上がった
筆者は10月27日の第6回会議は欠席したが、このときも福岡座長は
座長コメントだけを残して記者ブリーフィングに姿を見せなかった。国交省によれば、これから先も
欠席が基本になるとのことだった。
有識者のひとりに「記者ブリーフィングに出席せず、自分のコメントを国交省の役人に読ませて記者対応させている。これでは
責任者説明を果たしたことにはならないのでは」と尋ねると、「
その通りです。私は国交省事務局にそれを問い質しましたが『諸般の事情で』そうなったとのことです」との回答を得た。
そして、昨年12月8日。第7回会議においては、JR東海が作成した「トンネル湧水の大井川への全量戻し方」の資料が提出されていたが、やはり記者ブリーフィングに福岡座長は姿を見せなかった。そして、その
A4用紙1枚だけの座長コメントにはこう書かれていた(概要)。
「JR東海から示された資料が示され、現時点で想定されているトンネル湧水量であれば、
トンネル掘削完了後にトンネル湧水量の全量を大井川に戻すことが可能となる計画であることを有識者会議として確認した」
確かにこの日提出されたJR東海の資料は、極めて具体的だった。毎秒トンネル湧水を大井川に戻すには、釜場(水を一時的に貯めるプールのような場所)や揚水ポンプをどこにいくつ設置するかを文字とイラストで記載していた。
つまり「JR東海の想定であれば全量を戻せる」と解釈するのは間違っていない。しかし、
JR東海の予想を超える設定についてはまだ審議もされていないのだ。
有識者会議の福岡捷二座長。中央大学研究開発機構教授。専門は河川工学
記者ブリーフィングでは静岡県の記者から質問が殺到した。「(リニア工事で)影響を受ける側からすれば、『トンネル工事しても問題ない』とあっさり決められた印象がある。『
現時点で』との前提条件のまとめはJR寄りになっていないか?」と質問すると、江口審議官は「『あっさり』とおっしゃられたが、討議資料は事前に委員に出して検討してもらっている。我々にすれば『あっさりではない』」と返した。
他の記者からもさまざまな意見や質問が飛び出した。
「専門知識がない人間には、『れば』をつければ何とでもいえる。
『地震がなければ家は崩れない』と言っているのと同じ」
「
静岡県民に安心をしてもらうための会議なのに、このまとめ方はまずい」
「これでは、
明日の新聞に『全量戻せる』との誤った見出しがつくかもしれない」
これに対して江口審議官は「
この前提であればとの結果を出しただけ」と答えるだけだった。確かに、その前提における結果は間違いではない。だが、会議にオブザーバー参加していた難波副知事が、この点について記者ブリーフィングで苦言を呈した。
「座長コメントの字面は正確です。
ただし、これを読むと、(全量を戻せることが確認されたとの)誤った印象をもたれてしまう。こういう書き方は避けてほしい」