大学入試における英語の扱い、結論は2021年に持ち越しに

4技能が大切なはずだったが

 これまでの会議では、「英語4技能は大切だ」ということが委員の間でほぼ総意のように見えましたが、ここに来てそれに疑問を投げかける意見が出てきました。 渡部良典委員(上智大学)の意見  まず、渡部委員が「英語4技能重視」をひっくり返します。渡部委員は英語教育の専門家の立場から2点発言されています。(渡部委員は、遠慮がちに遠回しに、途切れ途切れに発言していましたので、筆者が一部補っています)  発言の一つは、「現在、大学では(英語が)できるべき人ができていない。それは、入試の段階で、入試に機能をもたせすぎているからではないか(測らなければならないものを意識しすぎるなど)。入試は最低限のものを測るべきで単純にあるべきだ」というものです。恐らく、「入試ではつねに4技能を測らなければならない」などのように義務化させ、複雑化させてはならないという主張だと思われます。  もう一つは、「(試験に対して)厳格な判定がなされないのではないか。イギリスのOfqual (第三者調査機関)は試験実施団体が行う問題だけでなく、その団体の試験実施能力まで調査するが、日本には、試験実施前に試験を調査することはない。試験後に試験に不備があることがわかっても遅い」というものです。また、CEFRについても「理論であって、刻々と変わっていく。現在は、4技能ではなく6技能だ」と発言していました。ここでいう「Ofqual」とは、「Office of Qualications and Examinations Regulation」という、イギリスの資格・試験監査機関を指しています。試験実施者の利益相反事項もチェックしており、例えば、過去問解説集の出版なども規制しています。  このような発言がありましたが、発言の制限時間に達し、途中で打ち切られました。この後の会議では、渡部委員の発言はほぼスルーされましたが、委員の中で唯一といえる英語教育の専門家ですので、この発言を軽視してよいものなのかの判断は難しいものがあります。 芝井敬司委員(一般社団法人日本私立大学連盟常務理事)の発言  芝井委員は私立大学の代表として、ここ数回の会議で「私立大学のやり方を縛らないでほしい」という発言をされています。今回も、「大学生全員が、英語4技能に縛らないでほしい。なぜ4技能なんだ」といった発言をされました。大学生には、英語が必要でない学生もいる。英語よりも日本語の4技能が必要な学生もいる。日本語の4技能ができていないのに、なぜ英語の4技能なんだ。英語だけを特別に扱うのはどうか、という趣旨の発言をされました。毎回、同様の発言をされていますが、私立大学としては、一律に枠に当てはめて「大学はこうでなくてはならない」と決めつけるのが困るという考えです。  しかし、その後で柴田委員などから「英語は必要な能力である」ことを説明され、最後に萩生田大臣が、4技能の話に戻しました。  ところで、萩生田大臣は、英語4技能の話ではありませんが、現在、各大学に対面授業をやっているか、オンラインでやっているかのアンケートの話をされました。それは、対面の授業が50%未満の大学は公表していく方針に関するものです。これは、大学を吊るし上げるものではないと言うものの、いくつかの大学側からそのような公表はよくないと言われているようです。  しかし、オンラインが多い大学ではどのように授業を進めているのかが受験生の側からすれば見えないので、「受験生にこういうときにどういう授業をやっているかを知ってもらうのは極めて重要である」「大学にはどのような取り組みがあり、どのような奨学金の制度があるかを知ってもらう」という考えのようです。

民間かナショナルか?

 大臣退出後、再び英語4技能の話になりますが、各委員が専門分野から様々な意見を言いますが、概ね大学入試において4技能を測る試験は「民間」か「ナショナル」(国営あるいは今の大学入試センターによる試験)かという議論になります。時系列通りではありませんが、以下にまとめます。 民間試験について ・4技能の試験という意味ではすでに達成している。 ・格差の問題がある。地域格差もあるが、経済格差もあり、逆に大学側が民間試験を受けられるような家庭の学生を望んでいるところもある。 ・利益相反の問題がある。やはり、Ofqualのような第三者機関も必要だ。ちなみに、英検は公益財団法人、TOEFLは一般社団法人、ケンブリッジは一般財団法人、TOEICは一般財団法人であるが、GTECは株式会社である。 ナショナルテストについて ・国策として4技能を学習することになっているのならば、学習指導要領にあっているナショナルテストがあるべき。 (※注)この意見の前に、「昭和35年告示の学習指導要領以来4技能を総合的に育成することを明示されている」という指摘があった。 ・今の大学入試センターでは、4技能に対応するのは困難である。(大学入試センターの限界) ・ナショナルテストでは、是が非でも4技能に対応したものを用意してもらいたい。(それができないのなら民間を利用すべき)
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結論の出なかった2020年
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