そもそも「元NHK記者」というのはブランドである。その理由は、東大や京大卒といった輝かしい学歴があったとしても、そう簡単にはなれないものであり、NHKのニュースというのが一定の信頼性を保っているからである。
何でも学歴で決められてしまうのは良くないのかもしれないが、それでも漢字のミスを連発したり、言葉の意味をわからずに使ってしまうような人間が記者をやってしまうと、ニュースの信頼性が落ちてしまう。例えば「政治家の鑑」と書こうとして「政治家の鏡」と書いてしまったり、「中止」と書こうとして「中上」と書いてしまったりするようなことがあってはならないのだ。
しかし、NHKから国民を守る党を熱烈に支持している「N国信者」たちは、どこからどう見ても記者には思えない立花孝志を本気で記者だと思っているし、NHKが公式文書で「記者ではなかった」と回答しても、立花孝志を貶めるためにNHKが嘘をついていると思ってしまう。
実際、ジャーナリストを自称する立花孝志の仕事ぶりをよくご覧いただきたい。安倍晋三総理が入院した際に東京地検の事情聴取を受けていたという話は「デマ」もいいところだった。女性アイドルがファンから暴行される事件が起こった時にはネットから拾ってきたガセ映像を「これが彼女のセックステープだ」と言って拡散し、「アイドルは性を売りにしているのだから事件のリスクを背負うのは当然だ」とまで言い放っていた。記者のお作法の基本のキも理解していない人間が、「元NHK記者」を自称するなんて笑止千万。それでもN国信者たちが立花孝志の言うことを信じてしまうのは、圧倒的に社会経験が少ないからだろう。
NHKの社印付きの公式文書による情報提供と、東京運動記者クラブの記者証を持っていたからという理由で「記者だった」の一点張りをしている立花孝志の主張、どちらがより真実性が高いかと言ったら、それは間違いなくNHKの公式文書だろう。
<取材・文・図版/石渡智大>