ジェンダー平等を目指したはずの男女共同参画会議から排除されたフェミニストたち

男女共同参画会議

2019年、安倍政権時代の男女共同参画会議で発言する菅義偉官房長官(当時)(時事通信社)

男女共同参画会議の「人事」が孕む問題

 10月、菅首相が日本学術会議に推薦された会員候補のうち6人を任命しなかったことが問題となった。任命されなかった6人は、安全保障関連法や特定秘密保護法などで政府の方針に異論を唱えてきた。  男女共同参画会議でも、実際にフェミニストが政策決定の過程から排除されていった経緯がある。  本連載の目的は、内閣府男女共同参画局・男女共同参画会議(以下、男女共同参画局/会議)の成立がジェンダー平等につながらなかった原因を探ることだ。  第1回の記事では、男女共同参画局/会議成立までの歴史を紐解き、国際的なフェミニズム運動による外圧と国内での橋本行政改革の合流地点で起こった「多元化」と「集権化」の相克こそがその性格を決定づけたことを示した。  第2回からこの第3回の記事では、男女共同参画局/会議の成立以降、その性格がどのようにバックラッシュと停滞に繋がったかを見ていきたい。これについては、男女共同参画局/会議の「政策への影響力」と「政策へのアクセス」に分けて考える。「政策への影響力」とは男女共同参画局/会議が実際の女性政策に与える影響の度合いのことであり、「政策へのアクセス」とは男女共同参画会議がフェミニストや女性団体などの市民社会のアクターに機会を与える度合いのことだ。  今回の記事では、特に「政策へのアクセス」の低下について、男女共同参画局/会議の人事を分析することで示したい。

「フェモクラット」が生まれにくい日本の官僚社会

 この分析においては、審議会(各種専門調査会を含む)・担当大臣に注目したい。事務局(男女共同参画局)を分析対象としない理由は、日本の官僚制の特殊性によって事務局サイドでのフェモクラット(フェモクラットとは、Sawer (1990)の1970年代のオーストラリアでの諸改革についての研究から生まれた概念であり、女性政策部局担当部局に属するフェミニスト官僚のことを指す)の蓄積が難しいと考えられるためである(※1)。ここでいう日本の官僚制の特殊性は2点指摘される。  第1に、日本の官僚制のキャリア・パスがフェモクラットのモデルとなったオーストラリアのような欧米とは大きく異なるということである。日本の官僚制は、欧米の多くの国と異なり、開放任用制(職務を担う専門技能の有無が重視され、中途採用を中心とした任用制のこと)を取っておらず、またいわゆるキャリア組といわれる政策への影響力の大きい官僚たちは約2年ごとに部署異動することになっている。そのため、政府外で女性政策に関わる分野についての経験を積んだ人材が入ってくることもほとんどないし、また政府内で女性政策担当部局に長く留まって専門性を高めるのも難しい。  第2に、そもそも女性官僚比率が圧倒的に低いということが挙げられる。国家公務員の課長相当職に占める女性の比率は2020年時点ですら、わずか5.9%であり、女性官僚同士の連帯すら難しい状況がわかる。こういった状況の中では、官僚個人が外部の女性運動と官僚制の双方にアイデンティティを持つフェモクラットとなることは難しいだろう。  このように、官僚組織内でのフェモクラットの蓄積が難しい中で、「国家フェミニズム」の戦略を実現させるためには、民間から利害関係者や有識者を呼ぶ審議会や政治任用である担当大臣が重要といえるだろう。このような理由から、この分析では審議会・担当大臣の人事に注目する。 (※1)赤松良子のようなフェモクラットとして有名な官僚も存在するが、それは組織的に生み出されるものというよりは、あくまでも彼女/彼らの個人的な信条から発するものといえるだろう。
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男女共同参画局/会議成立以降、減っていったフェミニストたち
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