―― そもそも公文書改ざん問題の発端は安倍前総理の国会答弁ですが、安倍氏の責任は追及されていません。一方、桜を見る会の問題では、安倍後援会が前夜祭の費用を補填していたと報道されました。そこから、安倍氏の国会答弁は虚偽であり、その回数は昨年11月20日から今年3月4日まで計33回に上ることが明らかになりました。
川内: 安倍氏は森友問題で「
私と妻が関わっていたら総理大臣も国会議員もやめる」と答弁しましたが、実際には昭恵夫人が森友学園の国有地払い下げに関わっていました。しかし、安倍氏が「関わっていない」と答弁したら、関係各所が公文書を改ざんして関わっていないことにしてくれた。
ここから、安倍氏は自分の答弁が自動的に事実になる、という〝成功体験〟を得たように見えます。安倍氏は真実には興味がなく、自分が言ったことが事実になると思い込んでいたのではないか。だからこそ、桜を見る会の問題でもあれだけ強気に「後援会としての収支はない」「費用を補填した事実はない」「ホテル側から明細書等の発行はない」と言い切ることができたのでしょう。
しかし、これらの答弁は結果的に
虚偽だったわけです。また、先ほども述べましたが、国会答弁は国会議事録に保存されて歴史に残ります。
安倍氏には改めて国民の前で真実を述べ、自身が過去に行った虚偽答弁について責任をとる必要があります。そのために、安倍氏の証人喚問は必須だと思います。
一方、菅総理も官房長官として安倍氏と同様の答弁を行っていました。菅総理はこの点について「安倍氏に確認して答えた」「首相と平仄を合わせた」「もし事実が違った場合には私にも責任があるから対応する」と明言しています。菅総理は安倍氏に何を確認したのか、どう平仄を合わせたのか、事実関係を確認した上で、真実を述べる責任があると思います。
―― 安倍政権は議会制民主主義や立憲政治の根幹を傷つけてきました。
川内: 安倍政権は非常に独裁的でした。たとえば、安倍氏は国会でよく野次を飛ばしていましたが、その中でも「
選挙に勝ってんだからいいだろ」とよく発言していました。安倍氏は選挙に勝てば何をやってもいいと思っていたということです。
しかし、
権力を持てば何をしてもいいというのは独裁者の考え方です。だから選挙に勝ったからといって知人に国有地を安く払い下げたり、公文書を改ざんしたり、虚偽の答弁をしたりしてはならない。そんなことをしたら民主主義や立憲主義が壊れます。
安倍政権は独裁的な政権運営により国民の政治不信を深め、民主主義や立憲主義を破壊してきた。その責任は重いと言わざるをえません。
―― 菅総理は安倍政権路線を継承すると明言しています。
川内: 安倍政権のように嘘や誤魔化し、隠蔽、改ざんを繰り返し、民主主義を否定するということまで継承してもらっては困ります。実際、菅政権は日本学術会議の問題で民主主義の手続きや学問の自由を無視するような振る舞いをしています。
民主主義の良いところは、みんなで知恵を出すことです。その意味で、本来ならば政権にとって学問的に政策を批判してくれる学者は有難い存在のはずです。それを否定するのは民主主義の自殺です。
―― 日本の民主主義にとって安倍・菅政権は脅威だと思います。
川内: 確かに安倍・菅政権は独裁的な政権運営で、民主主義を破壊してきました。しかし、民主主義を破壊しようとする者は民主主義によって逆襲されるのです。
現に森友問題・加計問題や桜を見る会の問題では市民の告発、検察の捜査、省庁の抵抗などから、様々な事実が明らかにされてきました。その結果、現在では安倍前総理や菅総理は虚偽答弁をしたことが発覚して、その責任を問われているのです。
確かに安倍・菅政権の下で日本の民主主義は危機的な状況に追い込まれたかもしれません。しかしそういう独裁的な政権に対して、心ある市民やジャーナリスト、官僚、政治家が民主主義を守ろうと立ち上がりました。その結果、日本の民主主義は鍛えられ、さらに前進することになると確信しています。
(12月8日インタビュー、聞き手・構成 杉原悠人)
<記事提供/
月刊日本2020年1月号>