AI婚活が推し進める「同類婚」と抵抗としてのルッキズム

ビッグデータとAIを活用した婚活

婚活

画像はイメージ(adobe stock)

 政府は2021年度から、新世代の婚活マッチングシステムを、全国に普及させます。事業主体は各地方自治体で、政府はその導入を後押しするという方針。(参照:読売新聞)    新世代のマッチングシステムは、ビッグデータとAI(人工知能)を活用して、利用者の嗜好や人格を精密にデータ化していくものです。従来あった、顔写真・職業・年収といった外形的な分類にかえて、その人の価値観や行動履歴に重点を置いて、人間の人格をデータ化していくわけです。  人格をデータ化するとは、どういうことか。例えば、従来型のマッチングシステムであれば、趣味の欄に「映画鑑賞」と書くことですみました。新世代システムは、それ以上のことを調べ、分析し、分類します。彼(彼女)はどんな作品を観てきたのか。邦画なのか、韓国映画なのか、ハリウッド映画なのか。娯楽作品なのか、ドキュメンタリー作品なのか、文芸作品なのか。そしてそれらをどのような姿勢で観ているのか。ビッグデータ分析は、個人の消費性向をとおして、その人の教育水準・価値感・教養・所属階層を同定していきます。そうして釣り書(履歴書)は精緻化され、より的確な紹介に結び付けられるのです。  新世代のマッチングシステムは、めざましい成功をおさめるだろうと予想されます。この新しい方式によって、たとえば愛媛県では成婚率は13%から29%へと飛躍的に向上したという報告もあります。古くからある結婚紹介所の知見と、新しい情報技術が結合し、かゆいところに手の届く紹介制度が構築されます。国全体の少子化を食い止め、若年人口流出による「地方消滅」を食い止めるために、ビッグデータによるマッチングシステムに期待がかけられています。

AIによる同類婚

 新世代のマッチングシステムでは、まったく異質なものが出会うことはありません。詳細に分析されたデータに基づいて、似た者同士をマッチングしていきます。ここでは、驚くような「上昇婚」(逆/玉の輿)は起きません。その可能性はAIによってあらかじめ排除されることになります。AIが推奨するのは、堅実な「同類婚」であり、階層の固定化です。  これまでおそらく少なくない女性たちが、結婚に「上昇」を期待し、自分の生まれた境遇をわずかでも改善したいと望んできたのですが、AIはそうした望みに応じてはくれません。あまりおおきな夢を見ないで、身の丈に合った相手を探しなさい、と言うのです。ビッグデータ分析から得られた相手は、自分の身の丈に合った相手であり、いわば鏡に映された自分の姿です。したがって、すでに自分自身の生活に満足している人であれば、AIが推奨する相手をあまり抵抗なく受け入れることができるでしょう。自分自身の現在のありかたに自信をもって生きている人であれば、似た者同士の相手にも敬意をもって接することができるでしょう。  しかし、そういう人ばかりではないのです。AI婚活システムによって成婚を果たしていくのは、同類婚を受け入れられるような、ある階層以上の人々に限られるものであって、それ以外の人々にとっては、足切り・排除として作用することになります。新世代のAI婚活システムは、異なる階層間の差異を文化的な格差として露出させ、選別・排除を精緻にしていくのです。
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抵抗のルッキズム
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