日本だけが取り残される「不正選挙デマ」。右にも左にもいる、デマに乗る人達

3、反軍産複合体リベラル系

「Q」のステッカーを貼る車

QAnonはYouTubeなどを通じて日本にも瞬く間に広まった

 私はこの存在に最も頭を悩ませている。沖縄の基地反対運動の中にもトランプ支持の声がある。確かに4年前、「ヒラリーになるよりはトランプであればまさかの基地撤退がある」と考えた人々がいるのは知っていたし、その気持ちは理解できた。しかし、この4年間のあまりに人権を省みなかった彼の仕事ぶりを考えると今はもうそんな「まさか」に期待している場合ではない。それでもいわゆるリベラル派の中にトランプ支持が浸透する大きな理由は「トランプは戦争をしていない」というイメージからだ。  Qアノン発のこのイメージ戦略に日本のリベラルはもまんまと踊らされてしまっている。「戦争」という概念の解釈を巡っての議論が分かれるところだが、トランプの4年間は「戦争」はしていないが「攻撃」はしている。まるで日本の防衛大臣の答弁のような玉虫色のものだが、イランやシリアへの空爆には(局地的なものとの見方もあるが)合意してきた。  この件についてアメリカ人に聞いてみると、「トランプは新しい戦争をしてないってだけだよ。まして国内は内戦の危機まで行っているし、コロナ対策をせずに25万人の死者を出した。これは戦争どころではないよ」とのことだ。  さらには先日、選挙での敗北が濃厚になってから、トランプはイランへの攻撃を画策し、国防総省に止められるというニュースもあった(参照:BBC)。 「トランプが戦争をしない」=「平和主義者」だというイメージは米国ではすでに地に落ちたものだ。  また、民主党政治家と軍産複合体をセットで語る論調も怪しいものだ。共和党も戦争をしてきた訳だし、トランプとロシアとの関係の密接さも気になる。今のアメリカを見ていると、旧来の軍産複合体利権から離れて動いていく民主党政治家たちの台頭は明らかである。

4、スピリチュアル系

 いわゆるスピリチュアル系にも不正選挙論は浸透している。ラッパー、Kダブシャイン氏は、あまりにトランプ支持に熱を入れQアノンや新宗教系メディアを引用するようになり、Qダブシャインとしてアメリカにも広まっている。  ミュージシャンやスピ系の陰謀論はとにかく荒唐無稽なものが多い。  オバマのパートナーの「ミシェル夫人は男だった」とか「バイデンの耳の形が変わったので2人いる」というもの。果ては「バイデンは『カバール』(人身売買で世界を牛耳る存在)であり、その当選を祝った菅義偉も玉城デニーも大袈裟太郎もカバールである!」とか……。「トランプから日本人ひとりに6億円が振りこまれる」というものもあった……。  スピ系ミュージシャン系にこれらの荒唐無稽なデマが浸透するのは、彼らが一般的な社会経験を経ずに、一芸に秀でた才能でポジションを得た存在だからではないかと、僕自身もラッパーとして分析する。社会経験の乏しさから、社会の構造への認知が歪んでおり、そこにQ的な陰謀論が入り込むのだろう。社会というのは名もなき人々の各所各所での信頼や実績、その営みの積み重ねの上に成り立つのだ。そういう意識が彼らには欠如しているように見える。
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香港民主派の中にもデマに基づきトランプ支持する層が
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