前回から指摘してきているように本邦の統計は、11/15以降、集計の遅れによると見られる統計の乱れを生じており、7日移動平均でも数値が頭打ちになっています。これが実際にウィルスの増加=感染者数の増加が頭打ちになっているのなら、第3波エピデミックは再び謎の収束への転換を見せたこととなります。実際に夏の第2波エピデミックは、市民の自粛に加えて恐らく梅雨明けの高温多湿によって自然収束に向かったと思われます。
今回は、秋から冬に向かい気温は下がり、乾燥が進んでいること、移動傾向が一部の例外を除いて横ばいであることからエピデミックが介入なしに収束へ転じる理由はありません。したがって実態を見極めるには、この時期に厳しいのですが、統計の乱れが落ち着いた時点から加えて1週間ほど経過観察するか、数学的にフィッティングを行う他ありません。先週の統計の乱れにより、大切な1週間を失いました。こう言うことは無しにして欲しいです。筆者はとても困っています。
東部アジア・大洋州諸国における100万人あたり日毎新規感染者数(ppm 7日移動平均)
可読性を良くするためにシンガポールを除いている
韓国の状態が思わしくなく、そろそろ部分的ロックダウンなどの大規模な社会的行動制限の発動が見込まれる
Our World in Data
札幌市の移動傾向
ここ10日ほど移動傾向が減少しており、そろそろ新規感染者数が減少に転じるだろう
Apple
大阪府の移動傾向
殆ど移動傾向が下がっていない
Apple
東京都の移動傾向
殆ど移動傾向が下がっていない
Apple
本邦は、依然としてたいへんに厳しい状態にあり、有効なワクチンがない現状*では、できるだけ速やかに公的介入により大規模な社会的行動制限を行わなければ長期間且つ全国的なロックダウンが不可避となりかねません。
〈*合衆国疾病予防管理センター(CDC)は12/10にファイザーのワクチンを認可する見込みである。したがって合衆国では、12月下旬には優先接種第一陣が、2月には優先接種第二陣が開始される。しかしファウチ博士によると合衆国での8000万人を予定する一般接種第一陣の開始は、2021年の7月頃になる可能性が高いとのことである。本邦がそれに先んじて大規模な一般接種を開始できるとは筆者には考えがたい。そもそも本邦では、米欧では昨年4月には報じられ始めていた大規模接種のロジスティックス、優先接種など重要事項に関する話題が余り報じられておらず、準備自体が大きく遅れていると筆者は考えている〉
欧州を中心に、本邦の周辺国、東部アジア・大洋州諸国においても膨大な犠牲の発生と長期ロックダウンを回避する為にできるだけ早期に段階的な公的介入を行うことで感染拡大を封じ込め、封じ込みに失敗しても30日以内のできるだけ短い期間のロックダウンで済ませる為に様々な積極的取り組みがなされています。それにより、人も経済もできるだけ犠牲にしない努力をしています。
本邦の第3波エピデミックへの対策は事実上手付かずと言って良く
Too Late Too Littleそのものです。可及的速やかな政策転換が求められます。
筆者は、自分の思考プロセスなどをTwitterに書き込み、残った記録を後で見返す習慣があります。11年間継続している巨大な公開三行日誌と言って良いでしょう。
その中で本稿執筆終了後。筆者が頭を抱えていた本邦の検査数がOur World In DATAで全面的に差換となった件について、突然このようなTwitterメンションがやって来ました。
“本日より、PCRで検査された人数を使用します。 以前は、実行されたPCRテストの数を使用していました。 したがって、陽性率は少し高くなります。“(
Edouard Mathieu氏からリプライより。ツイート内のリンクは配信先によって正常に表示されない場合がございますので削除しております)
Oh! Our World in DATAのデータ責任者からいきなり日本語でご教示頂きました。検査数は、検査実施数と検査人数の二種類あり、本邦はこれまで検査実施数でした。これは、一人で同じ日に複数回(複数検体)検査した人が居ると検査数が過大評価になります。このことは以前から気になっていたのですが、漸く改善されたと言うことです。結果として検査陽性率の分母が小さくなり、陽性率がやや高く評価されるようになりますが、それがより正しい値です。
ただこの変更は、最近の本邦における統計の乱れとは関係ありません。一方で、検査数と検査陽性率が過去に遡及して刷新された理由がわかり、すっきりしました。
こういったハプニングがあるからTwitterはおもしろいです。こういった経緯で海外のいろいろな方と付き合いが始まります。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ32:迫り来る地獄3
<文/牧田寛>