保守的な宗教観、極右政権下で「フェミニスト」として戦うということ。ポーランド女性に聞いてみた

フェミニスト間でも広がる分断

 宗教や各家庭の教育と同じように、地域性なども強く影響していると答えたのはMさん(30代)だ。  「女性の権利についての盛り上がりは地域によります。場所によっては、保守層はむしろフェミニズムなどに対抗しているぐらいです。ポーランドのフェミニズムの現状については、連帯がなく分断しているように思えます。左寄りで考えのないフェミニズムといったイメージが広がっているのは、個人的には悔しいです。  デモについても、権利や平等についての問題なのに、叫んでいる様子や野蛮な振る舞いをしているとことばかりに焦点が当てられています。参加者には若い人が多いですが、右寄りの人たちの間では『若くて叫んでばかりいる』というステレオタイプが蔓延していて、悲しいです。政治的な立ち位置に関わらず、お互いが同じ偏見を抱いているように思えます」  また、日常的に女性が虐げられていると感じるのは、やはり仕事に関連した状況だとMさんは話す。  「間違いなく男女の格差はあります。私も就活中に『子どもを産む予定はあるか』と聞かれたことがあります。そういったことを聞くこと自体が差別ですし、違法です。また、知り合いでも男性から嫌な気持ちになる冗談を言われることがあります。たとえば、『昇級したのは上司がお前を好きだから』とか。  こうした現状には、宗教の影響がものすごく大きいです。政治にも力を及ぼしていますし、教会は現政権とも密接に結びついています。ただ、今回のデモに関して言えば、私の周りの男性はみんな支援しています。メディアや政権の支持派は言葉遣いの汚いスローガンや教会への落書きなど、一部を取り上げてスケープゴートを探していますが、そうであるべきではないと思います」

日本人女性は「薄っぺらくて男性の添え物」

 男女間、世代間、政治的立ち位置などによって深い溝が生まれているポーランド。女性の権利やフェミニズムに関しては、特にそれが顕著に表れているように思えてならない。  「たとえば、中絶禁止法案について支持している男性は、『障害を持って生まれても自分が育てる』と言いますが、これは母体の問題です。こうしたテーマについて話す機会は少なくないですが、私の周りにはリベラルな知り合いが多いので、ポジティブな反応が返ってきます。強く反対したり、女性に対して高圧的なのは、やはりネット世論ですね」  ネット上が差別的な言葉や高圧的な人間で溢れかえっている……その一点に関しては、世界共通なのかもしれない。日本人女性の生き方やフェミニズム事情については、どう思っているのだろう。 「日本人女性は静かで綺麗でいることを強いられているように感じています。『女は三歩下がって歩け』と。私はアニメが好きでよく観ているのですが、それを観る限りでは、すごく薄っぺらくて男性の添え物でしかないですよね。甘くて若くて無垢であるべきだというのが、日本人のなかの女性観なのかもしれません。一人一人の女性はそうじゃないんでしょうけど、こちらで目にする情報からは、そういった印象を受けます」  さて、読者の皆さんはポーランド人女性たちの声を聞いて、どのように感じただろうか? ご覧いただいたとおり、人の数だけ意見があるポーランドでは、女性の権利という一点にしても、宗教政治地域性教育家庭環境などが複雑に絡み合ってくる。  しかし、女性の権利やフェミニズムはポーランドだけの問題ではない。また、女性はもちろん、母を娘を、姉を妹を、妻を彼女を持つ男性にも当然無関係ではない。遠い異国に暮らす女性たちとはいえ、彼女たちの声に耳を傾けることで何かを思い、感じるはずだ。その気持ちに目を向けることが、女性の権利やフェミニズムについて考える一歩なのかもしれない。 <取材・文/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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